国内

東電・エネ庁の電力供給量過少申告は「原発利権」温存のため

「真夏の大停電」が起きると大騒ぎされたが、実は、当初の電力供給見通しでは、夜間の余剰電力を活用して水を汲み上げ、ピーク時に発電する揚力発電400万kW分が含まれておらず、大停電は回避できると週刊ポスト4月29日号で報じた。なぜこんなことが起きたのか。

まずは大山力・横浜国立大学大学院教授(電力システム工学)の説明を聞こう。

「揚水発電は夜間の余剰電力を使って水を汲み上げる仕組みですから、夜間にどれだけ安定的に余剰電力を揚水に供給できるかがポイントです。400万kWの根拠になる夏の夜間電力の見通しを精査すればさらに供給力が増える可能性がある」

環境エネルギー政策研究所の松原弘直・主席研究員はこういう。

「電力会社は通常、電力需要が下がる夜間は火力発電の出力を下げて運転する。コストがかかる方法ではあるが、夜間も火力発電の出力を下げずに揚水発電用の水をポンプアップすれば、揚水発電の供給力を増やすことができるはずです」

さらに東京電力幹部自らが、「揚水発電力の過少申告」を認める発言をしていたことも突き止めた。

本誌発売日の4月18日に、民主党は「電力需給問題対策プロジェクトチーム」を設置し、翌19日の初会合には細野哲弘・エネ庁長官や東電役員らが出席して需給計画を説明した。

この会合に参加したある議員が本誌報道を前提に、「実際に揚水発電で見込める供給力の上限はどの程度か」と質したところ、東電役員は、

「850万kWまでは可能です」

と明言したというのだ(役員の発言について東電は「確認できない」と回答)。

前出の経産省幹部が語る。

「エネ庁から揚水を供給力に含めるよう指示された東電は、昨年の夏期の夜間余剰電力などをもとに850万kWという数字を報告した。すると今度は“それでは多すぎる”と修正を求められたようだ。東電役員は、その隠すはずの試算だった850万kWという具体的な数字を思わず口にしてしまったのだろう」

枝野長官も含め、嘘がバレても「次の嘘」で塗り固めようとする政府の品性の卑しさには反吐が出る。しかも、「850万」が昨年実績の数字ならば、やはり専門家の指摘通り、火力のフル稼働などで揚水の最大出力「1050万」も実現できる可能性が高まった。

第一生命経済研究所は、電力不足による経済活動の低下で今年の実質国内総生産が3.9兆円ダウンすると試算している。それが政官と東電の原発利権のためだとすれば、国民や企業は彼らに「損害補償」を求めるべきではないか。

※週刊ポスト2011年5月6日・13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
川崎、阿部、浅井、小林
〈トリプルボギー不倫騒動〉渦中のプロ2人が“復活劇”も最終日にあわやのニアミス
NEWSポストセブン
驚異の粘り腰を見せている石破茂・首相(時事通信フォト)
石破茂・首相、支持率回復を奇貨に土壇場で驚異の粘り腰 「森山裕幹事長を代理に降格、後任に小泉進次郎氏抜擢」の秘策で反石破派を押さえ込みに
週刊ポスト
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
2020年、阪神の新人入団発表会
阪神の快進撃支える「2020年の神ドラフト」のメンバーたち コロナ禍で情報が少ないなかでの指名戦略が奏功 矢野燿大監督のもとで獲得した選手が主力に固まる
NEWSポストセブン
ブログ上の内容がたびたび炎上する黒沢が真意を語った
「月に50万円は簡単」発言で大炎上の黒沢年雄(81)、批判意見に大反論「時代のせいにしてる人は、何をやってもダメ!」「若いうちはパワーがあるんだから」当時の「ヤバすぎる働き方」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
“トリプルボギー不倫”が報じられた栗永遼キャディーの妻・浅井咲希(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》女子プロ2人が被害妻から“敵前逃亡”、唯一出場した川崎春花が「逃げられなかったワケ」
週刊ポスト
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン
芸歴43年で“サスペンスドラマの帝王”の異名を持つ船越英一郎
《ベビーカーを押す妻の姿を半歩後ろから見つめて…》第一子誕生の船越英一郎(65)、心をほぐした再婚相手(42)の“自由人なスタンス”「他人に対して要求することがない」
NEWSポストセブン