国際情報

日中常時40度超の暑い国 寝床にひしゃくで水撒いてから寝る

夏が暑くなりそうだ。電気があまり使えない=クーラーが使いづらいとなると、おののくばかりだが、世界にはもっともっと暑い土地、酷暑地帯がある。「そこに比べると日本はまだまし」という話をお届けしよう。フリーライターの輔老心氏が報告する。

* * *
「ワ」はアフリカのガーナ北部アッパーウェスト州の州都。ブルキナファソとの国境近くの街である。州都とはいえ、電力はあったりなかったり、水道も朝の水汲み頼り。そして、乾期の気温は日中常時40度オーバー。

JICA(国際協力機構)のボランティアとして約2年間、学校でコンピュータを教えた古川彰さん(37歳)の体験した酷暑の世界とは。

「ワでは汗をかくことがありません。汗が出ない。皮膚の表面に出た瞬間から蒸発していくからです」

ということは、意外にお肌は常にさらさらなのか?

「ざらざらです。塩分が皮膚に残るので、首のまわりは常に塩でざ~らざらしてます。自分の水分が飛んで枯れていくことがわかりますね」

とにかく水を飲む。1日に5リットルは飲む。そうしないと“枯れてしまう”のだ。メシの味は濃い。塩っぽくて油がキツい。体からエキスが汗とともにどんどん出て行ってしまうから、補給しなければ! なのだ。

そして、街の様子はといえば、昼間はゴーストタウンのように見事なまでにシーンと静か。日の出前から午前中、日が落ちてからが人の活動時間だとか。じゃあワの人は昼間は何をやっているのか?

「横になっています。ぐったり、のんびり、昼寝しています。今日は暑い! と言いながら(笑)」

現地の人もついつい「暑い」と言ってしまうところが面白い。何年住んでも暑いのだろう。

「最初の頃は、ワの人たちの一連の動きがあんまりにものろのろしているので、ちょっと頭にきたんですよ。『これ、やっといてね』と頼んでも『わかったよ』と言って昼寝してますしね(笑)。でもだんだんわかってきた。無駄に早く動くと、体内で熱が発生してしまう。熱を生まないようにそーっとゆっくり動いていたんです。生きる知恵ですね」

古川さんは咄嗟に「高い山に登った時に高山病になる感覚」をイメージしたという。そして、郷に入っては郷に従えの教え通り、せかせか動くことを極力セーブしたそうだ。暑さ対策として。そうやって、現地での水の飲み方、身のこなし方を少しずつ学んでいった古川さんだが、大問題に突き当たる。

「夜、眠れないんです。暑くて暑くて!」

熱帯夜。現地の人はどう寝ているのか。その工夫とは……外で寝ることだった。彼らは「暑っつーいよ! 今年は暑っつーい!!」と言いながら、家の外、屋根の上で寝る(屋根から落ちる事故もたまに起こる)。まだ、風にあたる可能性があるからだ。密閉された屋内は蒸し風呂のようになってしまうのだ。

ところが、古川さんは外で寝られなかった。蚊に刺される心配があるからだ。マラリアに罹患すると面倒なことになる。では屋内で寝る工夫は?

「現地の日本人のあいだで、“アレ”をやるしかない、と呼ばれていた方法があります」

それは、自分の寝床に、ひしゃくで水を撒くという荒業だ。そんなことしたらびしゃびしゃになってしまうのでは?

「びしゃびしゃの寝床で寝るんです。水分が蒸発する時の気化熱で少し温度が下がる。それは2時間続きます。2時間で乾いてしまうので、暑くなって起きて、また水を撒き、寝る。それを一晩3回くらい繰り返す。

細かいテクニックとしては背中があたる部分を濡らすと体調が悪くなる場合があるので、そこだけは避けて水を撒くこと」

う~む、壮絶。今年の夏、我々が使えるとは思えないが、そこまでしないと眠れないとは!

「あとは保冷剤ですね。電気が通じているうちに氷を作り、クーラーボックスで保冷剤を冷やし、夜、その保冷剤を枕にするんです。『俺は恵まれている。電気が通じる時間帯があるんだものな~。保冷剤があるなんて、あぁ俺は恵まれてる!』と思いながら、2時間刻みで寝るんですよ」

※SAPIO2011年6月15日号


関連記事

トピックス

告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
《たった一言で会場の空気を一変》「チームみらい」の躍進を支えた安野貴博氏の妻 演説会では会場後方から急にマイクを握り「チームみらいの欠点は…」
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
中国の人気芸能人、張芸洋被告の死刑が執行された(weibo/baidu)
《中国の人気芸能人(34)の死刑が執行されていた》16歳の恋人を殺害…7か月後に死刑が判明するも出演映画が公開されていた 「ダブルスタンダードでは?」の声も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
高校野球で定められている応援スタイルについての指導指針は競技関係者と学校関係者を対象としたもので、一般のファンは想定していない(写真提供/イメージマート)
《高校野球で発生する悪質ヤジ問題》酒を飲んで「かませー」「殺せ」と声を上げる客 審判がSNSで写真さらされ誹謗中傷される被害も
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏(共同通信)
《“保守サーの姫”は既婚者だった》参政党・さや氏、好きな男性のタイプは「便利な人」…結婚相手は自身をプロデュースした大物音楽家
NEWSポストセブン
松嶋菜々子と反町隆史
《“夫婦仲がいい”と周囲にのろける》松嶋菜々子と反町隆史、化粧品が売れに売れてCM再共演「円満の秘訣は距離感」 結婚24年で起きた変化
NEWSポストセブン