ライフ

脱原発電力システムの鍵を握る「スマートグリッド」とは?

 日本が今後、脱原発へと進んでいくということは、この国に巨大な「新エネルギー関連需要」が生まれるということだ。キーワードは「スマートグリッド」だ。スマートグリッドとは直訳すれば「賢い送電網」だが、細かい定義は専門家の間でも異なる。

 簡単に説明すると「IT技術を駆使して、電力を供給と需要の双方から調整する、次世代型の電力網システム」である。つまり、どこでどれだけの電力が作られ、また消費されるかを細かく把握し、エネルギーを効率よく配分する仕組みそのものを指す。

 太陽光は悪天候の時、風力は無風の時に、発電できない。環境エネルギーは原発などに比べて出力が不安定である。そのため、スマートグリッドによるきめ細かい調整が不可欠となる。

 この分野で日本が遅れていると指摘するのは、国内外のエネルギー情勢・政策に詳しいエネルギー戦略研究所の山家公雄(やまか・きみお)所長だ。

「震災直後にエリアごとの輪番停電が実施されたことで図らずも明らかになりましたが、日本の送電網では大ざっぱにしか、『ON/OFF』の切り替えができません。

 もしスマートグリッドが導入されていれば、戸別にピンポイントで調整したり、信号や病院の電気は生かしたりといった処置ができたはずです」

 停電がたびたび起きる欧米に比べ、日本の送電網は進んでいるというイメージからすると意外だが、実際、5月26日には国際エネルギー機関が、「日本の送電網の再生可能エネルギーへの対応能力が世界の主要国の中で最低水準にある」とする報告書をまとめている。

 つまり日本が脱原発に進むためには、スマートグリッドの整備が急務であり、だからこそ国内外から「これからの需要」が注目されているのだ。

 一言でスマートグリッドと言っても、その裾野は非常に広い。資源エネルギー産業に詳しいジャーナリストの井元康一郎氏が説明する。

「スマートグリッドは、よく自動車技術と比較して説明されます。自動車の部品は、エンジンやタイヤなど、何万点もある。同じように、スマートグリッドを構成する要素には多種多様なものが含まれ、様々な技術の集合体がスマートグリッドなのです」

 具体的には太陽光、風力発電などの発電装置、それをロスなく送る送電技術や蓄電技術、その配分を調整する技術などが挙げられる。

「発電装置の部分では、日本の技術は高い。特に風力発電の増速機(羽根の回転を増幅して発電機に伝える機器)の世界シェアでは5~6割を日本の数社で占めています。他社に決定的な差をつけるだけのテクノロジーを持っているのです」(山家氏)

※SAPIO2011年6月29日号

関連記事

トピックス

10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
ヒグマが自動車事故と同等の力で夫の皮膚や体内組織を損傷…60代夫婦が「熊の通り道」で直面した“衝撃の恐怖体験”《2000年代に発生したクマ被害》
NEWSポストセブン
対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
歌人・俵万智さんと「鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴さんが送る令和の子どもたちへメッセージ「体験を言葉で振り返る時間こそが人間のいとなみ」【特別対談】
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン