国内

【女子アナ復興日記4】「日常取り戻す」被災地に矛盾する感情も

早坂まき子アナの女子アナ復興日記4

元仙台放送アナウンサーで震災直後の取材にあたり、現在は東京でフリーアナとして活躍する早坂まき子氏が考える連載「震災のあと」。最終回は、日常を回復していく被災者たちの複雑な想いについて触れる。

* * *
「日常を取り戻す」そのことの大切さを、被災地支援番組を担当していますと日々感じます。「被災地の方々も早く日常に近づく生活をして安心したいと考える方が多い」と、被災地に行ったボランティア団体の方をインタビューすると聞きますし、私が宮城県の知人と電話をしてもよく聞きます。ですが、それとは矛盾する感情に悩まされている被災地の現状もあります。

例えば、地元のお祭りを開催するか否かです。宮城県名取市では、例年開催されている夏祭りを開催する地区と開催しない地区がありました。それは各地区での話し合いで決められた結果ですが「震災後だからこそ、祭りを開催して元気を出そう」という町と、家を失い避難している方が多い地区などでは「町の状態を考えると今年は自粛し、開催するべきではない」という考えの町があり、同じ被災地の方でもそれぞれ思いが異なる状態です。

これは名取市だけではなくて、東日本の特に沿岸部でボランティアをした方からもよく聞くことで珍しい話ではありません。東北三大祭りの「仙台七夕まつり」は鎮魂と復興の願いを込めて開催の運びとなりました。しかし町単位のお祭り開催となると資金面や運営に関われる人数も限られてくるからという理由もありますが、被災地に住む方の中には「お祭りはまだ不謹慎だ」と考える人がいらっしゃるのも事実ということです。

このような日常を取り戻すうえでは、複雑な心境が時には対立してしまうことも「仕方がないね」と考えざるを得ない現実に直面する機会が多いと話す被災者の声を、私は9月になってよく聞きます。

震災直後、私が取材していたご遺体安置所となっていた利府町の施設も9月からは震災前の姿を取り戻し、ライブやイベント会場として再開しました。さらに気仙沼市の唐桑体育館は、震災直後ご遺体安置所となっていて、現在津波被害にあった場所から運び出されたアルバム写真や家財など「思い出の品」を保管する場所となっています。本来の体育館としての使用にいつ頃から切り替えるかを現在検討中とのことです。

被災地では、着実に日常を取り戻す歩みが進められています。その歩みが早いか遅いか。正解はありません。町のお祭りを開催するか否か。震災後あくまで緊急時として対応した施設が、本来の使用状態にいつ戻すのか。つまり「日常に戻す」的確な時期がいつなのかは、人によって捉え方が千差万別です。

いつか悲しみは日常で上書きされなくてはならないはずだし、そうあるべきです。ただその裏にある人々の複雑な思いは、全ての日常へ戻る復興の過程に潜んでいるものなのではないでしょうか。

【プロフィール】

早坂まき子。元仙台放送アナウンサー。六年在籍した仙台放送時代に東日本大震災に遭う。現在フリーアナウンサーとしてJ:COM被災地支援番組『週刊ボランティア情報 みんなのチカラ』司会担当。個人的な被災地支援活動もしながら、長期的にどのような支援が出来るか模索中。


関連記事

トピックス

おぎやはぎ・矢作兼と石橋貴明(インスタグラムより)
《7キロくらい痩せた》石橋貴明の“病状”を明かした「おぎやはぎ」矢作兼の意図、後輩芸人が気を揉む恒例「誕生日会」開催
NEWSポストセブン
豊昇龍
豊昇龍が8連勝で単独首位なのに「懸賞金」は1敗の大の里のほうが400万円超も多い!? 指定本数の増加で「千秋楽までにさらに差が開く可能性がある」の指摘も
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
「一体何があったんだ…」米倉涼子、相次ぐイベント出演“ドタキャン”に業界関係者が困惑
NEWSポストセブン
エドワード王子夫妻を出迎えられた天皇皇后両陛下(2025年9月19日、写真/AFLO)
《エドワード王子夫妻をお出迎え》皇后雅子さまが「白」で天皇陛下とリンクコーデ 異素材を組み合わせて“メリハリ”を演出
NEWSポストセブン
“CS不要論”を一蹴した藤川球児監督だが…
【クライマックスシリーズは必要か?】阪神・藤川球児監督は「絶対にやったほうがいい」と自信満々でもレジェンドOBが危惧する不安要素「短期決戦はわからへんよ」
週刊ポスト
「LUNA SEA」のドラマー・真矢、妻の元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《大腸がんと脳腫瘍公表》「痩せた…」「顔認証でスマホを開くのも大変みたい」LUNA SEA真矢の実兄が明かした“病状”と元モー娘。妻・石黒彩からの“気丈な言葉”
NEWSポストセブン
世界陸上を観戦する佳子さまと悠仁さま(2025年9月、撮影/JMPA)
《おふたりでの公務は6年ぶり》佳子さまと悠仁さまが世界陸上をご観戦、走り高跳びや400m競走に大興奮 手拍子でエールを送られる場面も 
女性セブン
起死回生の一手となるか(市川猿之助。写真/共同通信社)
「骨董品コレクションも売りに出し…」収入が断たれ苦境が続く市川猿之助、起死回生の一手となりうる「新作歌舞伎」構想 自宅で脚本執筆中か
週刊ポスト
インタビュー時の町さんとアップデート前の町さん(右は本人提供)
《“整形告白”でXが炎上》「お金ないなら垢抜け無理!」ミス日本大学法学部2024グランプリ獲得の女子大生が明かした投稿の意図
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン