ライフ

上司からの着信で心身を病む「電話恐怖症」が爆発的に増加中

「どうしてメールで済ませるんだ! 電話をしろ!」――上司からのぼやきも聞こえてくる時代だが、通話より時間が短縮できるという理由ではなく、通話自体を恐れてメールに頼る若者が増えているという。ビジネス現場の携帯電話やメール使用に詳しいアイ・コミュニケーション代表取締役の平野友朗氏が語る。

「約束の時間に遅刻してしまう場合でも、電話ではなくメールで連絡を済ませる若手社員の方が増えています。上司から怒られるのがわかっているから電話することができず、メールという便利なツールに逃げ込んでいるんです。メールでも伝われば同じじゃないかと開き直る人までいます」

上司への連絡ならまだしも、お客様や取引先への謝罪をメールで済ませてさらに大きな問題に発展するケースも少なくない。

電話に出られる状況でもあえて出ずに、留守電で用件を確認し、心の準備をしてから折り返す人もいる。

「電話が嫌いな人は、下手なことをいいたくないから、情報を頭の中で整理したうえで応答したいと思っているのではないでしょうか。電話というのは立場が下の人が相手に合わせるというのが普通なのですが、最近はどうやら立場が下の人でも主導権は渡したくないという気持ちが強いようです」(平野氏)

精神科医の浅川雅晴・浅川クリニック院長は、子供の頃からTVゲームに没頭してコミュニケーションに欠陥がある若者が、上司からの着信に追い詰められて心身を病む「電話恐怖症」の増加を指摘する。

「上司から頻繁にかかってくる電話に頭を悩ませ、うつや動悸・頭痛・吐き気・多汗などの心身症を発症する人が増えています。着信音に恐怖を感じる人も多く、聴覚過敏や幻聴に陥ることもあります。携帯が普及して15年近くになりますが、5年、10年の長い時間をかけて今、爆発的に症例が増えているのです」

また、上司からの電話を取り損なうことを恐れるあまり、マナーモードにしてポケットに入れた携帯が、着信していないのに振動していると錯覚する人もいる。これは幻想振動症候群(phantom vibration syndrome)といわれるもので、携帯の着信に対する過剰意識が生み出したもの。何かが太腿に触れただけで、脳が携帯のバイブと誤認してしまうという。

電話の取り逃しを防ぐために、歩行中は必ず携帯を手に持つという人もいる。「トイレの個室の中でも上司の電話に応対する同僚を見て心配になった」(30代・金融)と、必死に食らいつく若者もいるようだ。

※週刊ポスト2011年11月18日号

関連キーワード

トピックス

和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン