国際情報

オリンパス事件 最大の問題は日本企業全体の信頼揺らいだ点

オリンパスによる「飛ばし」問題が世間を騒がしているが、その本質的な問題点は、2001年にアメリカで起きたエンロン事件と酷似していると、大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。

* * *
光学機器大手のオリンパスがバブル期の証券投資の損失を外部に移す「飛ばし」で隠し、企業買収の資金で穴埋めしていた問題は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)や会社法の特別背任などを視野に入れて当局の実態解明が進んでいる。

オリンパス・ショックの最大の問題は、監査法人に対する信用がなくなったことである。これは2001年にアメリカで起きたエンロン事件と構図が酷似している。

エンロンは総合エネルギー取引とITビジネスを展開する全米有数の大企業だったが、デリバティブ投資の損失を隠蔽・穴埋めするために行なっていた巨額の不正経理・不正取引が明るみに出て破綻に追い込まれ、会計監査を担当しながら粉飾決算やその証拠の隠蔽工作に関与していた世界有数の監査法人アーサー・アンダーセンは信用が失墜して解散を余儀なくされた。

それと同様に、いま世界では、日本企業のディスクロージャー(情報公開)やガバナンス(企業統治)は全くなっていないのではないか、他の会社は大丈夫なのか、という不信感が広がって、全体的には日本売りの状態に陥っている。

これほど大がかりなオリンパスの不正を20年間も見抜けずに放置していた“ゆるフン”の監査法人や証券取引所や証券取引等監視委員会はいずれも信用できないということで、日本企業全体に対する信頼が大きく揺らいでしまったのである。

実際、大王製紙の前会長による関連会社からの異常な借金も、担当のトーマツが見抜けなかった。すなわち三大会計事務所がこの二社の不祥事にすべて関与している、という点が異常なのである。

この際、監査法人の責任も含めて粛正すべきはすべて粛正し、膿を出し切らねばならない。そうでないと、ディスクロージャーとガバナンスに血のにじむような努力をしている他の日本企業が浮かばれない。

※週刊ポスト2011年12月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン