竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「通販で買ったセーターの色がイメージと違うので返品したい」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
インターネットの通信販売でセーターを購入しました。しかし、届いた商品の色がイメージと違っていたので、受け取ってから6日後に返品したいと連絡しました。しかし先方からは、一旦購入した物は返品できないと断わられました。このような場合、クーリングオフできないのでしょうか。
【回答】
インターネットの通信販売には、特定商取引法が適用され、商品受取の日から起算して8日以内であれば、クーリングオフができるとされています。つまり無条件に契約の解除ができます。クーリングオフすれば、費用は購入者の負担になりますが、商品を返送して代金の返却を受けることができます。
しかし例外があります。業者が返品について特約を定め、これを一定の方法で広告していれば、この返品特約が優先し、法律の定めるクーリングオフは適用されません。返品特約は、一切返品を認めないとか、法定期間より短い期間内に返品できるとか、欠陥品に限り返品を認めるなどさまざまです。
業者はこうした特約を、顧客が見やすい個所に、明瞭に判読できるように表示することが、義務付けられています。経産省のガイドラインでは、広告の最初や申し込み画面で、商品の価格等、必ず見るはずの事項の近くに、商品の価格等と同じサイズ以上の文字で表示する等の必要があるとされています。
十分な表示がなされているのに見落としていれば、クーリングオフできません。仮に返品特約がある場合でも、商品の色違いが約束違反になれば、そのことを理由に契約解除できますが、これも広告で適正な表示をしていたかが絡んできます。しかし、単にイメージと違っていたというだけでは、違約とはいえないでしょう。
とはいえ商品の色があまりに違うのであれば、消費者センターなどで相談してはいかがでしょうか。通信販売は、突然の訪問で不意打ち的に契約してしまう訪問販売と違い、消費者がじっくり考えられる時間的余裕があることから、保護の度合いが薄く、クーリングオフにも制約があるのです。慌てて、返品特約をうっかり見落とししないように注意してください。
※週刊ポスト2011年12月9日号