スポーツ

稀勢の里ギリギリ大関昇進の陰に「琴奨菊に横綱はムリ」の声

九州場所で10勝5敗の成績を残した稀勢の里の大関昇進が決定した。先場所の琴奨菊に次ぐ日本人大関の誕生だが、一部からは“お情け昇進”との厳しい声も上がっている。稀勢の里はなぜ大関になれたのか。

大関の昇進条件は、直近3場所で33勝以上とされてきた。直近の2場所で22勝だった稀勢の里の場合、九州場所の最低ラインは11勝だった。稀勢の里は中日までは1敗を守る活躍を見せたものの、13日目の把瑠都戦に敗れ、この時点で9勝4敗。14日目、千秋楽に連勝して初めて、大関昇進が決まると見られていた。しかし、事態は思わぬ方向に動いた。

「14日目に平幕・栃乃若を下した途端、協会幹部から稀勢の里を褒めちぎる発言が続出したのです」(スポーツ紙記者)

きっかけは14日目の打ち出し後、中入り後後半の審判長を務めた三保ヶ関審判部副部長(元大関・増位山)の一言だった。

「正々堂々、姑息な手段を使わず思い切った相撲を続けている。個人的な見解だが、33勝にこだわる必要はないのではないか」

これに他の親方も同調。

「数字だけではないという意見もある。関脇も長いし、この1年、相当いい成績を残している」(中村審判副部長=元関脇・富士櫻)

「実績もあるし、10勝でも申し分ない」(高田川親方=元関脇・安芸乃島)

「白鵬の連勝を止めるなど、実力は十分」(湊川親方=元小結・大徹)

そして最終的には、普段は口の固い審判部長の貴乃花親方(元横綱)まで、「千秋楽の午前11時から、理事会招集の要請に関する会議を開く」と明かした。昇進問題を預かる審判部が臨時理事会を招集すれば、事実上のゴーサインだ。

「会議では昇進を諮る理事会を30日に開催するよう放駒理事長(元大関・魁傑)に要請することを満場一致で決定した。昼には理事長もこれを承認した」(ベテラン相撲ジャーナリスト)

11勝目がかかる最後の琴奨菊戦に勝てなくても、稀勢の里は大関にする――協会の腹は決まっていたのだ。

「今年は白鵬に2勝したとはいえ、大関との対戦成績は7勝11敗。大関にするには早すぎる感がある」(同前)

だが大甘昇進であれ、協会は日本人大関、そしてその先の日本人横綱を作る必要性に迫られていた。それは、昨場所後に大関に昇進した琴奨菊ではダメだったのだ。ある古参親方の指摘は興味深い。

「琴奨菊は昨年の野球賭博問題で名前があがり、真偽は別として元若ノ鵬には八百長力士だと名指しされた。すんなり横綱に昇る器だとは思われていない」

その点、稀勢の里には可能性があったという。

「何よりガチンコとして有名だからね。理事長も貴乃花もガチンコで、彼らは注射をしない力士が昇進する難しさを知っている。だから万が一に備え、千秋楽前に昇進を既成事実にする必要があった。今回の件については、2人ともガチンコながら犬猿の仲といわれた貴乃花と高田川の意見が一致したほどだからね」(同前)

※週刊ポスト2011年12月16日号

関連記事

トピックス

嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン