国内

元社会党書記長「民主は政権交代を遂げた小沢一郎に敬意を」

現在日本の政治は「政治主導」とは名ばかりで、官僚主導のまま。日本の政治はどこへ向かっていくのか。そんな現状に対し「言わずに死ねるか!」――政治家経験者による日本政界への提言を聞こう。ここでは元社会党書記長の田辺誠氏(89)の話を聞こう。

* * *
東日本大震災、原発事故という国家の危機に際して、国会が機能不全に陥っており、復興どころか、事故後の復旧すら滞っている状態が続いている。

別に大連立を組む必要はない。全政党がこの難局を乗り切るために協力し合う、小異を捨てて大同に就くのは当然のことです。なのに、各党が自党の党利党略で動き、発言している。なぜ無条件協力ができないのか。

私は社会党で最も長く国対委員長を務めました。かつては「妥協の田辺」と呼ばれ、「国対政治」を担ってきた。何でも妥協してきたわけではないが、国民の生活にかかわる重大な問題には柔軟に対応しました。

いま、その「国対」が国会でまったく機能しない。

問題の1つ目は民主党内の合意形成ができていないこと。国対はリーダーの方針、政策、指揮に基づいて各党が国会運営を図るもの。だが、民主党のリーダー、野田首相の方針が定まらずにブレる。また、リーダーシップがないので党内がいうことを聞かない。これでは国対はできません。

2011年夏、民主党は子ども手当などのマニフェストの扱いをめぐって、自民、公明と3党合意を結んだ。国対は合意をまとめるのに相当な労力を使ったと思う。しかし、党内から猛反発が出て、代表選でも合意見直しが俎上にのぼった。国対が動いても党内がまとまらず、徒労に終わるということが続いている。

問題の2つ目は野党の姿勢。安全保障や歴史認識については貫徹して反対すればいい。だが、経済問題など国民の生活については必ずしも反対していればいいわけではない。

社会党の衰退の原因もここにあった。1960年代までは安全保障が主な政治テーマだったが、1980年代の東西冷戦構造の崩壊を経て、国会の重要な課題は安保から内政問題に移った。池田内閣の所得倍増計画がターニングポイントだったが、国民生活に直結する政策がテーマなのに、社会党は原理原則を貫いて反対を続けたので、国民の支持を失った。

いまの自民党を見るとどうか。大震災からの復旧・復興が喫緊の課題なのに、解散を求めるとは国民の方を向いていない。

民主党議員は若く、野党経験が足りないので政権を大切にしない。だから議員は党内の身内を撃つような行為を平気でする。野党の政権を取るための努力とは、国民の支持を得るために、国民のために為すべきことを真摯に考えて実行するということ。つまり、政権を大切にするとは、国民を大切にすることにほかなりません。

私自身はもう小沢一郎さんの出番はない方がいいと思うが、それは別として、自民党を飛び出し、国民第一を主張し、苦しんで苦しんで政権交代を成し遂げた人材には敬意を表するべきではないか。ところがいまの民主党にはその発想もない。それがいまの国対の幼さにも繋がっている。

●田辺誠:1960年初当選。社会党書記長、委員長を歴任。1996年引退。

※週刊ポスト2012年1月1・6日号

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン