大阪最大級の角打ちができる酒屋『ウエダ商店』
不思議なことに、どんなに混んでいても、一杯も飲まずに帰る客の姿は、あまりない。
「みんな仕事帰りにここでほっとしとうて来るわけや。飲まさんと帰したらかわいそやんか。テーブルやカウンターに対して、わしらが半身になれば何人かはよけいに入れる。ダークダックス飲み言うんやが、混んでるときは、これいけるで」
ほとんど毎日、会社のメンバー全員揃って午後5時40分に来て7時までいるという常連客(本日は10人連れ)が、そんな角打ち仁義を楽しげに披露してくれた。
ここに集まるだれもが力説するのが、あてのうまさだ。
「おでんはどこに出してもやっていけるで。濃くも薄くもないいい味が染みてる。三ツ星や」なんて声を聞きながら、カウンターの中にいて彼女ら自身がいい味を出しているふたりのおばちゃんが、味が染み込むように染み込むようにと毎日養生している。ごぼ天、こんにゃく、ちくわ……、顔ぶれはオーソドックスでも味はブラボー。
あちこちの客から、贔屓のあての名前があがる。「かまぼことはんぺんのうまさをあわせたしろてんは、はまるで」「缶詰を馬鹿にせんでほしい。さんかば(さんまの蒲焼)なんて、目からウロコ、ベロから苔ですわ」「余裕のある日は260円のポテトサラダ、切り詰めるときは120円のおから。これで酒が何倍もうまくなる。立ち呑みの極意やね」
これは、常連になって毎日通わないと、とても味わいきれないという結論に達した。
春が来てプロ野球が開幕すると、午後6時にはテレビのスイッチが入れられ、阪神タイガース戦の完全中継が流れるスポーツバーに一気に様変わりする。また一段と混み合い、熱気も充満する。
「店は10時から開けてますんで、朝から1日中立ちっぱなしなんですよ。疲れなんて感じたことはないですけど、悩みはあるんです。こんな不景気なご時勢に来てくださる皆さんに、いかに安くておいしいものを食べてもらうか。いかにいい気分になってもらえるか」(尾上社長)
大丈夫。みんな満足してますって。
■ウエダ商店
【住所】大阪市北区梅田1-3-1-100大阪駅前第1ビル
【電話】06-6341-5391
【営業時間】10時~21時(土曜20時半まで)
【定休日】日曜・祝日・第2土曜
焼酎ハイボール180円、ビール大びん390円、日本酒240円から。あて(つまみ)は、おでん(がんも100円、ごぼ天140円など)、しろてん130円、缶詰は、さんまの蒲焼280円など25種類。