ビジネス

邱永漢氏 日本が生活保護受給者と政治家だけになる恐れ指摘

1955年に『香港』で直木賞を受賞した作家で実業家の邱永漢氏(87)。受賞後始めた株式投資で大成功を収めた経験を持つ同氏が、ユーロ経済危機のあおりを受ける世界経済の中で、日本人がいかにサバイブしていくかについて、語った。

* * *
ユーロの経済危機の火の粉は必ず日本に降りかかってきます。「日本の国債を保有しているのはほとんどが日本人だから大丈夫だ」と安心していますが、誰が保有していようが借金は借金です。その上、赤字が続いていますから、借金は増え続けています。

そうなれば、財務省が大量に紙幣を刷ってハイパーインフレにするか、大増税をして辻褄を合わせるしかありません。いずれにしてもお金を持っている人はひどい目に遭って、日本国内は2種類の日本人だけになる心配があります。毎月13万円を手にする生活保護の受給者と、彼らに選ばれた政治家です。

では、日本人はどうすればいいのか。おそらく唯一の方法は、そんな日本には見切りをつけて、世界を舞台に働くことでしょう。その舞台の一つは中国です。ただし、中国が人手不足だからではありません。世界第2位の経済大国となった中国は、かつて日本が経験したようなバブルに見舞われると思いますが、それを乗り越える消費大国になるでしょう。そのプロセスで先輩格にあたる日本人の果たす役割があるのです。

たとえば中国では日本製の粉ミルクは安全性や品質の高さにおいて日本人が思っている以上に評価されています。日本の粉ミルクは飛ぶように売れているし、空き缶まで売れています。中国製の粉ミルクを入れて売る悪徳商人もいるのです。

ほかにも日本人が戦える土俵が世界中にたくさんあります。にもかかわらず、海外に出ていく日本人はじつに少ない。アフリカを例にあげると、中国人は100万人もいますが、日本人はたったの7000人です。

●邱永漢:1924年、台湾生まれ。東京大学経済学部卒業後、台湾、香港にわたる。1954年より日本在住。1955年『香港』で直木賞受賞。その後、株式投資を始め大成功。『私は77歳で死にたい』など著書多数。「株の神様」の異名を持つ。

※週刊ポスト2012年1月13・20日号

関連キーワード

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン