国内

「平清盛」批判の兵庫県知事 激しく観光客誘致の足引っ張る?

大人力コラムニスト・石原壮一郎氏の「ニュースから学ぶ大人力」。今回は大河ドラマにケチをつけた兵庫県知事の問題から、「大人のお世辞力」について学びます。

* * * 
そりゃ、個人的な好き嫌いはあるでしょうけど、大人としてあまりにもウカツな発言でした。8日にスタートしたNHK大河ドラマ「平清盛」。その初回の放送を見た兵庫県の井戸敏三知事は、記者会見で「鮮やかさがなく、薄汚れた画面ではチャンネルを回す気にならないというのが第一印象」と極めて率直に批判しました。

さらに「うちのテレビがおかしくなったのかと思うような画面だった」とこき下ろしたり、「公家社会打破のエネルギーや、日本の将来を先取りした人物像を正面に据えていただきたい」と注文をつけたりと言いたい放題。なんせ兵庫県は、清盛ゆかりの地であり、大河ドラマに合わせて観光客誘致のキャンペーンを始めているだけに、つい力が入ってしまったのでしょう。今後の展開次第では、NHKへの改善申し入れも検討しているとか。

きっと県としてもいろいろ協力したりしているんでしょうけど、今回のコメントは明らかに「差し出がましい発言」でした。やっぱりというか当然というか、知事の発言に対して「番組内容に介入するような発言をすべきではなく、立場をわきまえるべきだ」「(大河ドラマ)は兵庫県の観光PRのために制作されているのではない」などなど、たちまち厳しい批判が殺到します。

この先、知事がどう出るのかが興味深いところですが、このチャンスに観光客を増やそうと頑張っていた担当者や関係する業界のみなさんは、さぞや落胆したり憤ったりしていることでしょう。NHK側も、兵庫県に協力する気をなくしたかもしれません。残念ながら知事の発言は、極めて激しく観光客誘致の足を引っ張ってしまいました。

そもそも、ケチをつけたところで今さら大幅な軌道修正なんて不可能です。たとえ少々気に入らなかったとしても「素晴らしかった。今後が楽しみ」などとお世辞を言っておいたほうが、メリットが大きかったのは確実。ついでに「松田聖子さんの妖艶さに萌えました」とでもコメントすれば、ニュースとしての扱いも十分に大きくなったでしょう。

仕事の場面でも、協力会社や外部スタッフについて聞かれたときに、正直に「このへんがちょっとね……」と批判をしてしまうのは、百害あって一利なし。たとえ当事者の耳に入らなくても、目の前の相手に「なんだこいつ」と厳しい評価をされてしまいます。たとえ見え見えでもお世辞を言っておくのが、大人の計算高さであり用心深さに他なりません。

でもまあ、井戸知事の発言のおかげで、お世辞の大切さにあらためて気づくことができました。深く感謝したいと思います。もしかしたら、そこまでお見通しの上でのあえての批判だったのかも。ああ、素敵な知事を持つ兵庫県民のみなさんがうらやましい。……おかしいなあ。一生懸命お世辞を言ってるつもりなのに、お世辞に見えないですね。


関連キーワード

関連記事

トピックス

山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン