国内

温かいスーツ ヒットの秘密は身体とスーツの間の「蓄熱空間」

「自分の身体は自分で温める」。新発想を担う、ビジネスマンたちのための高機能スーツの秘密兵器とは何か。作家の山下柚実氏が、「ウォームスーツ」の開発者に聞いた。

 * * *
 赤外線ランプの下に、2枚の黒い生地が置かれている。

 ランプが点灯し、赤外線の熱が当たり始める。37、38、39度……。布の上にかざした温度計の数値がみるみるうちに上がっていく。

 あら? 不思議。左の数値は31.7度。右は39.8度。その温度差は一目瞭然だ。左右同じように熱に当たっているのに、なぜ温度に違いが出るのだろう。ちなみに左側の布は一般的なスーツの裏地。右は「サーモトロン」という特殊な繊維だ。

「数字が示すように、右側の生地は身体から発生する熱(遠赤外線)を反射し、熱を溜めこむ機能があります。この素材を裏地に使って身体とスーツの間に蓄熱空間を創り出しているのです」と、『ウォームスーツ』の開発に携わったコナカ商品本部・岩谷達志氏(52)は言った。

 特殊な裏地「サーモトロン」。太陽光発電に使われる炭化ジルコニウムがポリエステル繊維の芯に練りこんである。それが『ウォームスーツ』の秘密兵器の一つらしい。

 ふだんビジネススーツを身につけない私なぞ、「防寒」新商品としての『ウォームスーツ』と聞いても、ピンとこない。何がどう温かいのか、どうして下着やシャツではなく、「スーツ」で暖をとるのか。

 しかし、熱照射実験を目の当たりにすることで、なるほど「身体の熱を裏地で溜めこむ」というメカニズムの一端が腑に落ちた。

 街を見回すと、ビジネススーツのトレンドは何といっても「細身」。特に若い男性の場合、ぱっつんぱっつんにフィットしたパンツがオシャレということらしい。生地はツルンとして光沢がある。主流はシャープなシルエット。そして多くの男たちがオールシーズン、同じスーツで良しとしている。

 温度調節は、ワイシャツやコートなどで対処する。でも、真冬はどうなんだろうか。ツルンとしたシャープなスーツは、質感として「暖かい感じ」とかけ離れているみたい。

「実際に店先でも、『冬用が欲しい』『暖かいスーツは無いの?』という30~40代のお客様からの要望をたびたび耳にしてきました。しかし、メーカーとしては、十分に対応できてこなかったのが実情です」と岩谷さんは認める。

 取材の日は気温5度。ますます底冷えがする2月、3月を前に、街のサラリーマンたちは肩をすぼめ気合で寒さをこらえつつ、足早に歩く。ショートコートからはみ出たお尻と太股が冷たそう。考えてみれば、暖かいスーツへの潜在的なニーズは意外に高かったのに、選択肢は限られていたのでは。

「たしかにメーカーにとって冬物はリスキーなんです。冬に特化すると販売期間は10月末~2月頃の数か月と限定されてしまいますから。なかなか踏み切れなかったのですが、節電要請の高いこの冬、敢えてそのリスクに挑戦しようと考えました」

※SAPIO2012年2月22日号

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン