国内

就活で人事部苦戦 ネット炎上とサービス残業でブラック部署

 就活で辛いのは学生ばかりではない。人事の採用担当者も学生の確保など気遣うことが多く、疲労は心身ともにピークに達する。作家・人材コンサルタントの常見陽平氏が就活の裏側「採用担当者地獄絵巻」を紹介する。

*  *  *
 3月です。学生たちに聞くと、エントリーシートの締め切りや、面接が連続して起こっているようです。Twitterなどでも「また、“祈られ”た。くそ!」という、つぶやきを見かけることが増えてきました。

 ちなみに、祈られるとは、「落ちる」という意味です。不合格通知のメールに「今後の健闘をお祈りします」などと書かれていることから、いつの間にか就活スラングとして定着しました。

 祈られる度に「就活のバカヤロー!」と叫びたくなり、採用担当者を呪ってやりたくなる人もいることでしょう。でも、ちょっと待ってください。就活ですが、学生だけでなく、採用担当者も大変なのです・・・。

 株式会社ジョブウェブとレジェンダ・コーポレーション株式会社が共同で行った『2013年新卒 採用担当者意識調査(12月度)』によると、66.0%の企業が前年よりも苦戦すると予想。

 前年と比較すると21.0ポイント増加していました。倫理憲章の見直しにより、採用広報期間が短くなったこと、これにより学生が自社に気づいてくれないのではないか、企業や仕事を選ぶ視点が甘くなるのではないかなどが懸念されています。
 
 就活中の関西学院大学総合政策学部の3回生によると「明らかに企業の人事からは焦りが感じられますね」とのこと。「必ずウチに電話して欲しい」「明日の説明会には必ず来て欲しい」などの、まさにラブコールがいっぱいだとか。

 今の時期は、採用担当者は大忙しです。人事部は全社の残業や休日出勤を減らすことをすすめるものですが、採用担当者は今、残業と休日出勤だらけです。ある大手企業の若手採用担当者は私に対してこうボヤきました。

「全社の残業に対する締め付けがきつい中、上司から絶対に45時間以上つけるなって言われているんです。実際80時間は残業しているのに…。ただでさえ、ブラック企業だと疑われているのに。間違いなくブラック部署ですよ」

 そんな採用担当者は社内でも嫌われものです。「会社説明会にご協力を!」「面接官になってください!」など、忙しい現場の社員にお願いすることも多い上、「採用した社員がいまいちだったぞ、くそ!」と文句を言われるわけです。

 人事部の中でもセクションで仕事はまるっきりわかれ、仕事上の接点も少ないのですが、「人事」として見られるので「ボーナス安かったぞ、くそ!」「希望外の異動になった!」ことを根に持っていることも。採用担当の責任ではないのですけどね。中には採用担当が現場に異動する度に、いじめることが伝統芸になっている企業もありますよ。

 また、採用担当者は学生から見られていて、ちょっとした粗相でネット炎上することも。「少しツッコミを入れたら、ネットで圧迫面接だ!って書かれたんです。そんなこと言われるなら、何も質問できないでしょうが!」採用担当者は泣いています。

 私も合同企業説明会で講演する機会があるのですが、ここの関係者控え室は野戦病院のようです。ブースではかっこよく説明する採用担当者も、ここではぐったりとお昼寝しています。滋養強壮剤も飲みまくりです。でも、「午前中には20人と接触。うち、早慶、MARCHは8人でした」など、報告を続けなければなりません。

 そんな中、ハメをはずしたくなる、いや、ハメたくなることもあるようですが、忙しすぎてデートもままならず、すっかり夫婦の関係がなくなった中年なみに夜の営みも盆暮れ状態。プロ野球の開幕戦が近づいているのに、夜のボールとバット事情はいまいちというわけです。

 思わず出張先で遊びたくなるものの、キャバクラやデリヘルには学生バイトも多く、面が割れている採用担当者はそうもいかないとか。いざキャバクラというわけにも行かないわけですな。
 
 いや、私も採用担当者になったばかりの頃に思わず仲間数人と一緒に下北沢の1時間2000円キャバクラに行ったところ、会社にバレて糾弾されました。

 学生の皆さん、採用担当者の皆さんも大変です。逆に言うと、今年、彼らは弱り気味、焦り気味なのでチャンスとも言えるのですが。彼らの気持ちもわかってあげてください!

関連記事

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト