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「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”

『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏

『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏

 出版社勤務を経て、2009年に『さらば雑司ヶ谷』(新潮社)でデビューした作家・樋口毅宏氏の20作目は、小説ではなくノンフィクションだった。『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)は書名の通り、『BUBKA』という雑誌を立ち上げた故人、寺島知裕という男の生き様を描いており、いわゆる評伝にカテゴライズされる。しかし、寺島氏が広く国内で知られた人物かといえば、そうではない。そのうえ本書の2行目から著者はこう書く。

〈薄気味悪い目つき、胡散臭い茶髪、貧相な手足、神に見捨てられた容姿が脳裏に浮かぶ〉

 著者はかつて、出版社勤務時代に寺島氏の部下だったというが、そのネガティブな描写に驚かされる。さらにページをめくり、氏を懐かしむ会の献杯の挨拶シーンでは、別の後輩がこう挨拶する。

「みなさん思うところはあるでしょうが、きょうのところは勘弁してやってください」

 全く有名ではないどころか、著者のみならず周囲からも複雑な感情を持たれており、死んでもそれが消えないほどの負の爪痕を残した男の評伝なのである。にもかかわらず都内の複数の書店ではランキングに食い込み、すでに版を重ねるほど好調な売れ行きを見せている。

 たしかに雑誌「BUBKA」や寺島氏を知らずとも、ページをめくる手は止まらない。なぜここまで嫌われたのかという純粋な興味を覚えるからである。そのうえ読み進めるうち、読者は寺島氏を通して、かつて活気のあった、そして不謹慎な実話雑誌業界そのものを垣間見ることができる。著者の樋口氏にもそうした狙いがあった。「この時代は必ず書き留めておかなければいけない、という気持ちはすでにありました」と言う。

「僕はもともと『週刊プロレス』や『ロッキング・オン・ジャパン』が好きで、雑誌が作りたくて、たまたま近所にあったコアマガジンに潜り込んだ人間でした。当時在籍していたころのコアマガジンビルは毎日めちゃくちゃだったんです。昼の12時は社員が誰もいないのに、夜の12時には勢揃いするんです。まさに不夜城でした。その中でも特に、寺島さんが作った『BUBKA』をはじめ、『裏BUBKA』そして『マッドマックス』の編集部は特に活気があった。会社がまるで“楽しい牢獄”のような雰囲気で、これほど異様な熱気に包まれた日々は今後二度と経験することはないだろうという思いを持っていました」(樋口氏)

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