スポーツ

批判多い高校球児の野球留学 マイナスよりプラス多いと識者

 センバツ準優勝校の光星学院のレギュラーは、エースの金沢以外は他府県からのいわゆる「野球留学生」だ。野球留学について「容認派」「否定派」とあるが、「高校野球=郷里の代表」というイメージから、否定派の声が強い。だが、ノンフィクションライターの神田憲行氏は、高校野球取材20年の経験から、野球留学ではマイナスの部分より、プラスの部分を多く見てきたという。以下は、神田氏の解説だ。

 * * *

今年のセンバツは大阪桐蔭の優勝で終わり、昨夏に続く青森代表・光星学院の優勝旗への挑戦は、あと一歩で涙を呑むことになった。

 ……と書くと、「決勝は大阪代表同士やんけ」と揶揄される向きもあろう。なにしろ光星学院のレギュラーのうち地元中学出身はエースの金沢のみで、他はみな他府県からの、いわゆる「野球留学生」だ。とくに主将で捕手の3番田村、4番北條は大阪出身である。「大阪第二代表」という口の悪いファンがいうことも、一面、的を得ている。

 野球留学について「容認派」「否定派」とあるが、「高校野球=郷里の代表」というイメージから、否定派の声が強いように思う。だが私は、半分本気、半分冗談で「野球留学積極推進派」と名乗っている。というのも高校野球取材20年の経験から、野球留学でマイナスの部分より、プラスの部分を多く見てきたからだ。

 留学に反対する人たちは「地元の子を押しのけて」という。だが留学組だってちゃんと住み、学校に通って、青春の3年間をその土地に預けている「地元の子」である。さらに忘れられていることだが、留学したからといってレギュラーとかベンチ入りが約束されているわけではない。スタートラインはあくまで地元中学出身者と同じだ。

 私が取材で出会った野球留学選手のうち多くは、留学した地方を第二の故郷と呼んだ。休みの日に地元出身の家に招かれて遊びにいき、見慣れない食べ物をおっかなびっくり口に運ぶうち「美味しい」と感じるようになり、最初は目を丸くした豪雪など地方の光景を、卒業後に懐かしく思うようになる。

 東北地方の学校で監督をしていた友人は、関東遠征のたびにわざと宿舎を手配せず、関東からの野球留学生の自宅に東北の地元選手を一緒に連れて帰らせていた(もちろん食費などは学校が負担して渡していた)。するとどうなるかというと、オカンが張り切る(笑)。なにしろ15歳で自分の手を離れた子どもが「凱旋」してくるのである、しかも友達を連れて。

「息子がいきなり三倍になった気分。あの子たち、どれくらい食べるのかしら」

そして脱いだ服をとっちらかったままにしていた息子が、丁寧に畳む姿を見て、成長を感じるのである。

 とある年の甲子園、全国優勝したのは公立高校だった。試合後の宿舎取材で、私が「野球留学の私立ではなくて、地元選手ばかりの公立高校が優勝する意義」という趣旨の質問を振ると、監督は色をなして私に言った。

「別に野球留学が悪いわけじゃない。彼らは15歳で親元を離れて野球を頑張っているんです。偉いじゃないか」

 公立高校の監督にも、こういう意見があることを知ってほしい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
大東さんが掃除をしていた王将本社ビル前の様子(写真/時事通信フォト
《「餃子の王将」社長射殺事件の初公判》無罪主張の田中幸雄被告は「大きなシノギもなかった」「陽気な性格」というエピソードも…「“決して”犯人ではありません」今後は黙秘貫くか
NEWSポストセブン
小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン