電機メーカーの大幅リストラが続いている。だが、苦しい状況打開のため、これら大企業は本当に自らの血を流しているのか。大前研一氏は、これは明らかにまやかしの人員削減策だと指摘する。以下は大前氏の解説だ。
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パナソニックが今年度中をメドに本社部門の従業員約7000人を半減する方向で調整に入った。数百人程度の早期退職希望者を募り、残りは白物家電など現場に近い事業部門への異動と研究開発部門や生産技術部門の分社化による配置転換で削減する予定だという。
だが、これは明らかにまやかしの人員削減策だ。本社部門の余剰人員を他の事業部門に移したり、本社機能を分社化したりするだけだから、パナソニック全体の人員削減には、ほとんどつながらない。一部早期退職する人を除いては単なる“引っ越し”だ。
ただし、このような事例はパナソニックに限ったことではなく、日本の大企業ではどこでも似たようなことをやっている。そして、この問題は役所が抱えている問題とも似通っている。
つまり、企業の本社部門の人間は役人と一緒で、自分たちを削らないのだ。リストラを進める時は本社部門が仕切るから、工場の人員や子会社、関連会社などは削るが、自分たちのことは棚上げしてしまう。だから、どこの企業でも本社部門は縮小しないのである。
もし、勇気ある社長が本社部門を削れという命令を出したとしても、分社化して、そっくりそのままアウトソーシング化するだけだ。原子力安全・保安院が原子力規制庁に衣替えするのと同様で、そこにいる人間も、やっている仕事も、給料も、実は今までと全く同じなのである。
分社化すると社長からは見えなくなるので、本社のスリム化に成功したかのように錯覚してしまう。だが、実際には看板を掛け替えただけだから、コストはトータルでは下がっていないのである。
※週刊ポスト2012年7月13日号