国内

新聞世論調査より「Yahoo!みんなの政治」が実態反映との意見も

「小沢新党、期待せず79%」「消費増税法案可決を評価する45%」――と大々的に報じられる世論調査の結果に違和感を覚える人が多い。世論調査の数字は、本当に“民意”なのか、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏と長谷川幸洋氏が「世論調査ジャーナリズム」を論じる。

鳥越:国民とメディアと政治の関係について考えるとき、いつも私は太平洋戦争について思い起こします。日本の国民は最初から「戦争をしたい」と思っていたわけではないのに、メディアに戦意を煽られて大多数の国民が支持して戦争へと突入した。

 そのときのメディアは、世界情勢や戦況の真実を国民に伝えていないわけです。それどころか国民の心情を「鬼畜米英」へ誘導するように煽っていた。当時、世論調査はなかったと思うが、大半の国民は当然、「戦争やむなし」の方向に行った。

長谷川:太平洋戦争の例ですが、それとまったく同じことが、消費増税に関する世論調査についてもいえます。本来、社会保障の財源が足りないとすれば、それは保険料の値上げによって補うべきなのか、それとも増税によって補うべきなのか。

 仮に増税だとすれば、消費税が相応しいのか、それとも所得税なのか、法人税なのか。一方、歳出面ではどこに、どれだけの無駄があるのか――こうした全体的なピクチャーを国民に示して議論すべきなのに、ほとんどそれをしないまま、財務省が最初から「消費税ありき」を押し付けてきた。

 そして自民党、民主党といった政治側ばかりか、メディアもその理屈に乗り、それに沿った報道と社説を繰り返してきた。与えられる情報に偏りがあって、あらかじめ選択肢が狭められている。消費増税だけを決め打ちして世論調査で「消費税イエスかノーか」を問う形で行なってきたわけです。

鳥越:どうしたって、「増税やむなし」の結果が出るに決まっている。だから客観的な結果は期待できない。

 消費増税法案に賛成か反対を問う調査では、社によって極端な差がでた。6月の衆議審議の頃、同じ時期に行なった調査では朝日も読売も「今国会で増税法案を成立させるべきか」と質問したところ、「させるべき」が朝日では17%にすぎなかったのに、読売では64%もの高率だった。この結果を見れば、世論調査によって民意を図ることがいかに虚しいかがわかります。

長谷川:新聞・テレビの調査結果とネットのそれでも大きく異なることが多い。特に小沢氏に対する支持率がそうで、ネットでは非常に高い。「Yahoo!みんなの政治」などのほうが、調査主体に変な色がついていないだけに、世論の実態を反映しているのかもしれない。

 ただし、ネットも完全には信用できない。ネット番組でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について賛否を投票してもらうと8割ぐらいが反対でした。外資やグローバリズムを嫌う層が多いんだと思います。
 
鳥越:今は、中立、公正、客観的に民意を映し出す世論調査の仕組みがなくなっている。

長谷川:まずはメディアがしっかりすべきだと思いますが、まだ十分ではない。他に内閣府も世論調査を行なっていますが、国会の原発事故調委員長の黒川清氏の言葉を借りれば、政府に対する信頼度がメルトダウンしているから、国民から信用されない。そこで今、国会事故調の厳正さを見ると、私が期待しているのは国会です。衆議院や参議院の調査局が世論調査を行なってもいい。

鳥越:それでも最後はメディアに期待したいですね。

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連記事

トピックス

行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン