国際情報

中国版ジャスミン革命 いつでも起こり得ると国境なき記者団

 中国警察当局は、中国語のマイクロブログ(微博=ツイッターとフェイスブックの要素を併せ持つミニブログ)に対して「社会に悪影響を及ぼしている」と非難して監視を強めているが、警察による監視以外に一般的な当局の監視方法として知られているのは“5毛党”だという。一体これは何なのか。

 苛烈極める中国国内の言論統制の実態を、言論の自由の擁護を目的としたジャーナリストによる非政府組織である「国境なき記者団」アジア太平洋デスク、ベンジャミン・イシュマル氏が報告する(文中敬称略)。

 * * *
 5毛党とはネット上で政府寄りのコメントを発信する匿名集団で、1件あたり5毛(1元の半分、約6円)で政府に雇われている。彼らは政府のプロパガンダを流すばかりでなく徹底的な監視もする。

 5毛党はネットユーザーがデリケートな問題、情報を流したり、あるいは政府批判の文言を書き込んでいるのを見つけると、猛烈な非難の嵐を巻き起こし、ユーザーの発信する気力をくじく。

 ネット企業そのものもこの監視・規制の任務を果たす。中国の4大ネット媒体のひとつ、新浪微博は政府寄りのサイトだ。

 例えば、世界的に著名な芸術家の艾未未(アイウェイウェイ)が、ブログを理由に警察官から暴行を受け、自宅軟禁の身となった一件では、新浪微博は彼の拘束関連の内容をすべて遮断し、「艾未未」をキーワードで検索すると「関連法規および政策に基づき検索結果は表示しない」と表示される。

 また「アラブの春」や「ウォール街占領」など市民運動に関連する情報やワードは規制されている。「ジャスミン」「エジプト」も禁止だ。中国の都市名の後ろに「占領」という言葉を入力することはできない。例えば「北京占領」などだ。

 中国語のグーグルにはたくさんのフィルター・ツールが付随している。例えば、「天安門の人々」というキーワードを入力した時、天安門事件の際に天安門広場で戦車の前で写真を撮影した有名な“戦車の男”はヒットしない。

 中国政府はこれら規制について「安全」を保持し、中国文化を拡張するものだとして「健全なインターネットを!」というスローガンを掲げ、正当なことだとうたっている。

 規制・監視が強まる一方で、インターネットという情報ツールは、中国のネット市民にとって、情報を共有し、楽しむ場としてなくてはならない存在になっている。そのインターネットによって化学工場建設反対に2万人以上の人が集まり、そして、行方不明になった人権弁護士や反体制ブロガーたちの所在を、当局に仕方なく公表させる結果となっている。

 中国版ジャスミン革命はいつでも起こる可能性があるのだ。

 われわれ「国境なき記者団」は、毎年「世界報道自由ランキング」とともにネット検閲や規制を行なっている国家「インターネットの敵」を公表している。

 中国は、報道の自由ランキングでは179か国中174位。そして、北朝鮮、イラン、ミャンマーなど「インターネットの敵」12か国中の筆頭に挙げられている。

 われわれは、中国当局の弾圧を受けながらも、今後も中国への活動をつづけ、中国の実態を世界中に伝えていくだろう。

取材■瀬川牧子(ジャーナリスト)

※SAPIO2012年8月1・8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。千葉県の工場でアルバイトをしていた
【ホテルで11歳年下の彼を刺殺】「事件1か月前に『同棲しようと思っているの』と嬉しそうに…」浅香真美容疑者(32)がはしゃいでいた「ネパール人青年との交際」を同僚女性が証言
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)ら夫妻が逮捕された(Instagramより)
《市営住宅で0歳児らを7時間置き去り》「『お前のせいだろ!』と男の人の怒号が…」“首タトゥー男”北島遥生容疑者と妻・エリカ容疑者が住んでいた“恐怖の部屋”、住民が通報
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
《交際説のモデル・Nikiと歩く“地元の金髪センパイ”の正体》山本由伸「31億円豪邸」購入のサポートも…“470億円契約の男”を管理する「幼馴染マネージャー」とは
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン