国内

いま日本に求められるリーダーは理系か文系かを専門家分析

 グローバルリーダーには理系出身者が多い一方で、日本の大企業ではまだまだ文系出身者が多い。原発事故で対応が批判された東京電力のトップは、“東大文系”ばかり。原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が、原子力の安全規制当局としての責任を追及された際に「私は文系なので…」と呆れるいい訳をしたことも記憶に新しい。ということはいま求められる日本のリーダーは理系? しかし、そう単純な話でもなさそうだ。『理系バカと文系バカ』の著者があるサイエンス作家の竹内薫氏に聞いた。

 * * *
 グローバルな企業のリーダーには、理系的センスが絶対に必要です。リーダーは、さまざまな経営判断を求められたときに会社の利益を考え的確な判断をしていく合理性、社内、社外とも交渉し相手を納得させる論理性などが求められます。こうした点が追求できるのが理系の長所で、文系との大きな違いといえます。理系の人は、感情よりも理性で動いていますので、冷静にリスクを予測することにも長けていると思います。

 ただ、単に理系というだけではダメ。理系リーダーには、現実主義者的な要素が不可欠だと思います。つまり、いまある環境や社会の状況に合わせて臨機応変に自分の考えや、グループの方針を変えていかないといけない。大学の理系学部出身で総理大臣となった鳩山由紀夫、菅直人の両首相の例をみてください。鳩山さんには“友愛”という主張があり、菅さんだと市民運動出身ということからもわかるように確固たる考えみたいなものがベースにあって、それによって国を動かそうとしたわけですよね。

 でも、それがうまく機能しなかった。共産主義諸国の衰退をみてもわかるように、世界の例で見ても理想論で世界が動いているわけではありません。ある意味では現実主義者的な要素をもって現実に即して柔軟に対応していかなくてはならないのです。

 とはいえ、いま理系リーダーが企業や国のトップになったとして、グループを牽引していくことができる状況なのかというと社会システムはそうはなっていません。日本の社会システムは、規則ばかりの閉塞状況にあります。アメリカの社会システムは“事後評価型”であり、日本は“事前調整型”という専門家の指摘があります。

 例えば、会社が何か事業を立ち上げるとき、特許や商標などの権利問題などで既存の企業との確執が生まれるケースも出てくるわけですが、事後調整型のアメリカは、事業を始めてその後に、調整して適当なところで着地点を見つけます。ところが日本の場合は、例えばベンチャーを立ち上げようとすると、事前調整の段階で、ほかのライバル企業や役所によって潰されてしまうことが非常に多いです。

 アメリカのように事前調整する必要のないゼロからスタートできる社会システムがあって、初めて理系リーダーの力が生かされると思います。最近の日本で、アメリカのグーグルやアップルのような世界をリードする企業が出てこないのは、こうした社会システムにも問題があると考えられます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン