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遺伝子研究から「血液型」と「病気」の関係が解き明かされる

 血液型と病気のリスクの関係については、ゲノム配列の解析によって、科学的に証明され始めている。

 2003年にヒトの全ゲノム配列が解明されたが、それに先立つ2002年、理化学研究所遺伝子多型研究センター(現ゲノム医科学研究センター)が、世界に先駆けたゲノム関連解析(GWAS)という手法を用い、1人あたり数百万あるという遺伝的違い(SNP)の解析を行なった。

 同センターの前センター長であり、東京女子医科大学客員教授で遺伝子解析研究を行なっている企業「スタージェン」情報解析研究所所長の鎌谷直之氏がいう。

「遺伝的違いの解析によって、さまざまな病気の原因遺伝子が解明されました。その結果、血液型によって病気のなりやすさに差があったり、薬の有効性などの傾向があることが、客観性を持って科学的に示されるようになったのです」

 そのゲノム関連解析によって、例えばこの数年の間に以下のようなことがわかったという。<O型はA型の1.43倍、十二指腸潰瘍になりやすい>――2012年に発表されたデータだ。

 ヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんや十二指腸潰瘍の原因になっているが、同じピロリ菌を持っていても、胃がんになりやすい人と十二指腸潰瘍になりやすい人がいる。十二指腸潰瘍の患者7072人と健常者2万6116人の、約60万か所の遺伝情報の違いと十二指腸潰瘍になりやすさの関係を調べた結果、十二指腸潰瘍になる人は血液型がO型のほうが、A型に比べて1.43倍も多かったことが判明。

 他の病気を調べてみると、エコノミー症候群などの静脈血栓症はO型よりもA、B、AB型がなりやすく、狭心症や心筋梗塞などの心血管障害も同様だった。

 すい臓がんもO型よりもA、B、AB型がなりやすく、胃がんのリスクも同様の傾向にあるといえる。

 また、貧血に関しては、B型の人が他の血液型の人よりなりにくく、とくにB型女性はなりにくいデータがある。他にも骨や肝機能の指標となる「アルカリフォスファターゼ(ALP)」は、B型とO型がA型にくらべ高いことも判明している。

「今後、遺伝子や血液型によってさらにいろいろなことがわかっていくはずです。世界的には個別化医療に向かうといわれていますが、いずれ血液型によって薬を使い分けるのが当たり前になる時代がやってくるでしょう」(鎌谷氏)

※週刊ポスト2012年8月17・24日号

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