ライフ

荻野アンナ 介護に悩み「父を殺して私も死のう」と考えていた

 今年5月下旬、大腸がんの摘出手術を受け、現在抗がん剤治療のため自宅療養中の荻野アンナさん(55才)。大学教授と作家の仕事を続けながら、15年ほど前から高齢の父と母の介護が始まり、さらには食道がんを患った事実婚のパートナーの看病に明け暮れる日々。

 過労からうつ病を発症し、治療を受けながら父とパートナーを看取った。そして、今度は自らのがんと対峙することとなった。

 厳しい介護生活を経験する荻野さん。しかし、介護する側の心身に負担がかかりすぎると、共倒れの心配もある。実際にいま、日本の各地で、介護する子供が病死し、親も子の側で亡くなっていたというような孤立死や、介護側が追いつめられることによる介護殺人が起きている──。荻野さんが、自らの介護生活について話す。

 * * *
 わかる、というよりも、他人事ではありません。私だって、いつも一歩手前の連続です。父を介護していたときは、「父を殺して私も死のう」と思い詰めたことが2回ありました。母に対してもつい先日、食事を届けるときに、包丁を持って母の側に立っている自分の姿を想像してしまった。

 私たち親子が、共倒れや介護殺人を体験せずにすんでいるのは、神様のおかげ。福祉の費用を削るのが社会の流れですが、家族の負担をもっと少なくしてもらいたい。でも個人的には、悔いの残らないように、母にもできるだけのことをしたいと、体が動いてしまうんです。

 実は昨日、久しぶりに美容院に行って。そこのオーナー夫人と話をしてから、とても気分が晴れやかになったんです。

 その女性も20年ほど前、がんを患っていたんですって。術後、抗がん剤治療を受けていたときも、お店は絶対に休まなかった。そしてその後もがんは再発せず、現在も仕事を続けています。彼女いわく、「私は絶対に仕事を続けるという目標があったからサバイバーになれた。助かる人は、私みたいに絶対の目標がある人、もしくはノーテンキな人」と。そういえば、長寿の父もノーテンキでした。

※女性セブン2012年8月23・30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン