ヒトの外見や性質などを特定するのは遺伝子で、父親と母親から半分ずつ受け継ぐ。ヒトには約3万の遺伝子があり、これらの遺伝子情報はその人のパーソナルゲノム(設計図)となる。中でも個人の特定の体質を決めているのが一塩基多型(SNP)という遺伝子の型である。
大阪大学医学部を中心に全国の大学病院で約6000人の遺伝子を調べSNPによる病気の発症リスクを調べた結果、62のSNPが生活習慣病などの発症リスクにかかわっていることが判明した。
昭和大学歯科病院口腔がんセンターの新谷悟センター長に話を聞いた。
「62の遺伝子の型を調べることで、肥満、酸化ストレス、血管障害、コレステロール、メタボリックシンドローム、血栓、免疫、骨粗鬆症などのリスクを知ることができます。酸化ストレスに関係するApoEε(エプシロン)4遺伝子型のある型を持つ人は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが3倍になることがわかっています」
現在、どんな遺伝子の型を持っているのかを在宅で簡単に検査できる「ルクシー在宅遺伝子検査キット」も発売されている。頬の内側の粘膜を擦った綿棒を専門の検査会社に送る。
「遺伝子情報は親から子へ引き継がれますが、誤解してほしくないのは遺伝子があるからといって、必ずその病気になるわけではありません。体質に環境要因や生活習慣が加わることにより、発症しやすくなるわけです。自分の遺伝子を知ることにより、体質に応じた食事や環境を整えることで健康に暮らすことが可能です」(新谷センター長)
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年8月31日号