国内

宮城県・石巻地区最大の夏祭り「石巻川開き祭り」をレポート

 3.11・東日本大震災の被災地、宮城県・石巻市は、コラムニストの木村和久さんが高校卒業までを過ごした地。木村さんが、縁ある人々の安否を自身の足で尋ねながら、震災直後から現在の状況までをレポートします。今回は石巻地区最大の夏祭り、「石巻川開き祭り」についてです。

 * * *
 子供のころは人生最大の楽しみでしたが、大人になってから改めて参加する祭りはどうか? 実に30年ぶりぐらいでしょうか、感慨もひとしおです。

 そもそも川開きとは、今から約400年前、伊達政宗の命を受けた普請奉行、川村孫兵衛が北上川を掘削して、今の姿に流れを変えた。その北上川改修を称えつつ、水難者の供養をしようと、大正時代から「川開き」と呼んで、お祭りを開催しているのです。

 祭り前日は、東日本大震災の被災者の供養と、灯籠流しが行われ、おごそかな前夜祭となりました。以前から灯籠流しはありましたが、今回は流灯だけで、1万5000個と相当な数です。日没と同時に上流の数か所から続々と、灯籠を流し始めます。

 そして街中の下流に灯籠が着くころは、日もどっぷり落ちて、灯籠がくっきり浮かび上がります。灯籠のひとつひとつに、ろうそくが灯されてあり、芸が細かい。水面にともし火が映し出されて、幻想的な風景を見せてくれるのです。

 灯籠の数は、陸上の置き灯籠と合わせるとざっと2万個。東日本大震災で亡くなったり、行方不明になったかたがたの数と、くしくも一致します。まさに灯籠ひとつひとつが、魂なのです。

 手を合わせて、ずっと祈っている人も多数いらっしゃいました。非常に切ないですね。

 石巻の灯籠は、川に流す流灯のほかに、地元の小学生に絵や文章を書いてもらった、置き灯籠も多数あります。まだ明るいうちから家族連れが、息子の書いた灯籠を探していましたが、何せ数が多くて、自分の子供の灯籠を見つけられません。

 そんななか、何気なく発見した灯籠にびっくりです。画用紙に父親らしき人物が描かれて、コメントが。

<てんごくでもビール飲んでいるかな>って書かれてありました。お父さんは震災で亡くなられたのでしょう。明るくビール飲んでる? と振る舞ってる子供さんの姿がいじらしいじゃないですか。見ず知らずの子供の灯籠に、私は泣かされてしまいましたよ。

 灯籠を見た後、旧市内をそぞろ歩きます。ビールを売っている同級生を発見。やっぱり自分の生まれた街ですよ、誰かに必ず会うんですから。

 今回の川開きは、前夜祭から旧市内部分を歩行者天国化して、屋台を沢山出して、お客さんを呼び込みます。その商店街の歩道の脇には、置き灯籠が何百、何千と灯され、市内の照明が少ないせいか、きらきらとても目立つのです。

 ろうそくですから、風が吹いて消えたり、あるいはろうそくが燃え尽きたりすると、ボランティアがすかさず灯を点火します。見た目はきれいな灯籠ですが、これを演出するのは、並大抵のことではできません。

 多数のボランティアスタッフのおかげです。ほんと頭が下がります。街は浴衣を着た若者が多数います。この日を楽しみにしていたから、親が着せて送り出したんでしょう。さあ明日は本番の花火大会、とてもとても楽しみです。

 川開き当日です。中学生のころ、花火大会は夜なのに、昼には興奮して街に繰り出して屋台で遊んでいました。高校生になると、色気もつき誰と川開きを過ごすかが、最大のテーマになっていました。石巻の思い出の全てが、川開きに凝縮されています。

 正午ぐらいから、石巻のメインストリート、立町商店街は歩行者天国となりパレードが始まります。郊外のスーパーに客を奪われて、シャッター商店街化していた矢先の大震災でしょう。

 もう商店街は終わったと思ってましたが、沢山の見物客が来てくれて、まだやれそうな気もします。非常に嬉しいです。パレードの多くは地元の小学校の鼓笛隊です。今はボーイスカウト風に、団旗もかっこよくなり、市内全部の小学校が参加しています。

 自分たちの子供の晴れ姿を見る意味では動員をかけられますが、他県の観光客を呼ぶ祭りにまでは、なかなか発展しませんね。

※女性セブン2012年9月13日号

関連記事

トピックス

SNS上で拡散されている動画(Xより)
「“いじめ動画”関係者は始業式に不参加」「学校に一般の方が…」加害生徒の個人情報が拡散、YouTuberが自宅突撃も 県教委は「命にかかわる事態になりかねない」《栃木県》
NEWSポストセブン
女優・羽野晶紀と和泉元彌の母の節子さん(右・時事通信フォト)
《女優・羽野晶紀“嫁姑騒動”から24年目 の異変》元日に公開された和泉節子さんとの写真から伝わる「現在の距離感」
NEWSポストセブン
金屏風前での結婚会見(辻本達規Instagramより)
《慶事になぜ?》松井珠理奈の“金屏風会見”にあがる反感「わざわざ会見することもない」という声も 臨床心理士が指摘する「無意識の格付け」
NEWSポストセブン
命に別状はないとされている(TikTokより)
「クスリ漬けにされていたのでは」変わり果てた姿で発見された中国人インフルエンサー、薬物検査で陽性反応…肺感染症などの診断も【カンボジアの路上でホームレス状態で見つかる】
NEWSポストセブン
大谷翔平は何番を打つか
《どうなる? WBC侍ジャパンの打順》大谷翔平は「ドジャースと同じ1番打者」か、「前にランナーを留める3番打者」か…五十嵐亮太氏と福島良一氏が予想
週刊ポスト
杉本達治前福井県知事のセクハラ問題について調査報告書が公表された(時事通信フォト・調査報告書より)
〈体が熱くなるの〉〈スカートの中に手を…〉セクハラ1000通の杉本達治・元福井県知事が斉藤元彦・兵庫県知事と「上司・部下」の関係だった頃 2人の「共通点」とは
週刊ポスト
SNS上で拡散されている動画(Xより)
【栃木県・県立高校で暴行動画が拡散】学校の周りにインフルエンサーが殺到する事態に…県教育委は「命にかかわる状況」 弁護士は「典型的ないじめの構図」と指摘
NEWSポストセブン
中居の近影をキャッチ(2025年12月下旬)
《ゴルフ用ウェアで変装して百貨店に…》中居正広、外出頻度が増えている 表舞台では“盟友たち”が続々言及する理由
NEWSポストセブン
16年ぶりに写真集を出す皆藤愛子さん
16年ぶり写真集発売の皆藤愛子 「少し恥ずかしくなるくらいの素の姿や表情も、思い切って収めていただいています」
週刊ポスト
中国人インフルエンサーがカンボジアの路上で変わり果てた姿で発見された(TikTokより)
《へそ出しタトゥー美女の変わり果てた姿》中国インフルエンサー(20)がカンボジアの路上で発見、現地メディアに父親が答えた“娘と最後に連絡した日”【髪はボサボサ、うつろな表情】
NEWSポストセブン
米国によってニコラス・マドゥロ大統領が拘束された(時事通信フォト)
《大統領拘束を歓迎するベネズエラ国民の本音》「男女ともに裸にし、数日間眠らせず、窒息を繰り返させる…」国連に報告されていた“あまりに酷い拷問のリアル”
NEWSポストセブン
新宿の焼肉店で撮影された動画が物議(左は店舗のInstagramより、右は動画撮影者より提供)
《テーブルの上にふっくらとしたネズミが…》新宿・焼肉店での動画が拡散で物議、運営会社は「直後に殺処分と謝罪」「ねずみは薬剤の影響で弱って落下してきたものと推察」
NEWSポストセブン