竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「入学の身元保証人を頼まれました。面倒なことになりませんか」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
地方に住む知人の息子が大学に入学することになり、私に身元保証人になってほしいと頼んできました。身元保証人という制度について詳しく知らないので、引き受けた場合の義務や責任について教えてください。就職でなく入学なので、厄介なことにはならないと思いますが、アドバイスをお願いします。
【解答】
身元保証というと、就職時に会社に差し入れるものが頭に浮かびます。その場合の身元保証人は、被用者の行為で使用者が蒙った損害を弁償する義務を負います。被用者の身元保証は過酷になりがちなところから、身元保証法という特別な法律が身元保証人の責任を一定の範囲に制限しています。
しかし、大学入学の身元保証人の義務や責任は、社会人である被用者と使用者が締結する雇用契約に付随する身元保証とは性格がやや異なります。すなわち大学入学も契約ですが、入学後、学生は大学の支配下に入り、その教育を受けます。被用者の業務に関連する行為による損害の賠償を目的の身元保証とは同視できません。
具体的にどんな義務や責任を負うかは、大学から作成を求められる保証書をみて、判断してください。勉学、研究に努めさせること、退学処分その他の懲戒を受けた時には、従わせることなど、いわば後見的な義務を引き受ける内容になっていると思います。
これらの義務は、すぐに金銭的負担が保証人に生じることはないですが、安心はできません。おそらく保証書には、学費の滞納や施設に損傷を与えた場合の責任なども負わされることになっているはずです。
そのように知人の息子が学費を支払わなかった場合、身元保証人に請求されることはあり得ます。そこで不安があれば学費や学納金の金額、納付状況についても確認しておき、いざという場合にどの程度の負担になるのかも覚悟しておくことです。
反面、身元保証人に学業成績を開示するような取り扱いもあるようです。大学側は、保証人というよりも保護者的役割を期待していると思います。なんにせよ、将来の夢を託せる学生の身元保証であれば、有意義でしょう。
※週刊ポスト2012年10月19日号