ライフ

男性は“わが家は大丈夫”と考える人多いと『震災離婚』著者

 3.11後の不安から「震災婚」が増えているというが、実際は、極限状況で見えた人間性や価値観の違いから結婚をやめた人も多い。さらには復興や疎開への意識のズレ、経済的問題、家族を失った苦しみなどから、被災地・遠隔地問わず「震災離婚」が増えている。その実態を、被災地での長期取材も含めた丹念なルポで追う話題の『震災離婚』(イーストプレス)。

 筆者が東日本大震災の後に考えたのは、この非常事態には誰もが、ある意味究極の人間関係である夫婦のあり方を見直し、結婚観や恋愛観を変えただろうということ。三浦天紗子さんは、現地で何が起こっているのかを肌で感じるために、宮城・南三陸町や仙台市に何度も訪れ、取材やボランティアを重ねてきた。

 本書には、被災地で起きた震災離婚のさまざまなケースが紹介されている。

「震災がなかったら離婚なんて考えもしなかっただろう、あるいは離婚まではしていなかっただろうと感じたケースもありました」

 原発事故を受けて、子供を疎開させるかどうかで真っ向から対立した夫婦。避難生活のストレスで互いの信頼を失っていった夫婦。自分たち家族のことよりも会社の業務を優先した夫に不信感をつのらせる妻。冷えきった妻との関係を解消して、愛人と家庭を築くことにした夫。夫婦の亀裂はさまざまな形で表れた。

「震災で夫婦間での考え方の違いが明らかになったようです。家が流された。原発の問題もある。このままここに残るのか新天地を求めるのか。残るなら仕事はどうするのか。新しい場所で仕事は見つかるのか。親はどうするのか。子供の将来は…。難問が段階的に迫ってきて、これをどう乗り越えていくか、夫婦の絆というのがものすごく問われたと思います。それぞれの分岐点でふたりが同じ方向を向いてないと、どんどん深みにはまっていってしまう。

 極限状態のなかでは、考え方だけでなく、話し合っているときの相手の態度も大きな問題。まったく話し合う余地がないような横暴な態度なのか、相手のことを思いやりながら話し合うのかで、受ける印象は全然違うと思います」

 被災者への取材から、男と女では家族に対する考え方も大きく違うと感じた。

「男性は現状維持型、つまり被災していても故郷に住み続けたいという人が多いように感じました。一方女性は、子供を第一に考えて新天地に移ってもいいという人が多い。男性は根拠もないのに“わが家は何があっても大丈夫”と考えている人が多いのに対し、女性は“これほど生き方が違えば夫は他人だ”とドライに考える人が多いようです」

※女性セブン2012年10月25日号

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン