国内

中国スパイ事件 TPP反対派を抑えるため米国に仕組まれた説

 元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小学館)で戦後政治史においてアメリカの“虎の尾”を踏んで失脚した政治家たち12人を紹介している。その他にも、最近では「中国スパイ事件」に連座してある政治家が失脚した事件に、実はアメリカの影が見えるという。以下、孫崎氏の解説だ。

 * * *
 2012年5月に、在日中国大使館の一等書記官が、外国人登録証明書の不正更新の容疑で警視庁から出頭要請を受ける事件が起きました。この書記官は鹿野道彦農林水産相(当時)と接触をもっていたため、スパイ容疑が浮上。結局、鹿野農水相は、直後の2012年6月の内閣改造で交代を余儀なくされました。

 しかし、この書記官はスパイというより、立場を利用して投資ブローカーをしていた人で、むしろ中国側が処罰すべきで、日本側が騒ぐような案件ではありません。こう言うと失礼かもしれませんが、農水省にそれほど重要な機密があるとも思えません。

 鹿野農水相はいわゆる“農水族”議員で、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には反対の立場を取っていました。日米首脳会談で渡米して、TPP参加を表明したい野田首相にとっては邪魔な存在だったのです。

 鹿野氏の更迭後に第二次野田内閣で農水相に就任したのは郡司彰氏です。郡司氏は「TPPを慎重に考える会」の副会長も務めるなど、明らかにTPP反対派でした。ところが、入閣して数日後には「これからは閣僚の一員として行動をとる」と、野田内閣のTPP推進に協力すると宣言しているのです。

 つまり、中国外交官スパイ事件は、マスコミの力を利用して、TPP反対派の閣僚のクビを切ってすげ替えるために仕組まれた事件だったと私は見ています。

※『アメリカに潰された政治家たち』より抜粋

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン