ライフ

注目の毛髪再生医療 米国企業ではフェーズ2の段階まで進む

 男性の悩みといえば薄毛だが、カツラや植毛はどうもと思う人は少なくない。そんな人たちが期待を寄せるのが毛髪の再生医療だ。塗る、飲む。育毛剤はこれまで、内服療法、外用療法の2つの方向から研究が進められてきた。

 最近では、緑内障治療用の点眼薬で、治療中に副作用としてまつ毛が劇的に伸びることが観察され、話題になっている。

 現在、「ラティース」という名で、まつ毛用育毛剤として米国で認可され売られているのがそれだ。

「ビマトプロストという成分の副作用で、現在、この成分を頭髪用に応用できないかどうか、治験段階にあります」(東京大学医学部付属病院形成外科医の吉村浩太郎講師)

 発毛のプロセスはそもそも、いままで多くの謎に包まれていた。それがようやくここにきて、毛乳頭細胞や毛母細胞、毛包幹細胞など、たくさんの細胞が交互に影響し合いながら、発毛と脱毛のヘアサイクルを繰り返していることが明らかになってきた。

 毛髪研究の第一人者、板見智大阪大学大学院教授は、次にように指摘する。

「毛包移植――いわゆる自毛移植も、近年技術革新がなされましたが、自分の毛を脱毛箇所に移すだけなので、毛の数自体が増えるわけではありません。そこで、いま最も注目され、研究者がこぞって取り組んでいるのが、“毛髪再生医療”なのです」

 本人から取りだした細胞を試験管の中で培養し、大量に増やしたのちに、本人に戻す。この、各国が研究にしのぎを削る「再生医療」が、いま、発毛の分野でもトレンドだというのだ。

「髪の毛が抜けると、毛の細胞は、『新しい髪を生やそう』というシグナルを出します。このシグナル伝達物質を支配しているのが『毛乳頭細胞』なのですが、この細胞に着目した再生医療が、すでに臨床実験の段階に来ています。これは男性型脱毛症に有効な再生医療で、弱った毛乳頭細胞を強いものに植え替える、という画期的な治療です」(板見教授)

 臨床実験は、安全性を確認するフェーズ1、患者に投与して有効性と安全性を確認するフェーズ2、最終確認をするフェーズ3の3段階で行なわれ、それをクリアすると承認となる。

「現在、米国のベンチャー企業が、フェーズ2の段階まで来ています。この分だと、5年以内には、新しい医療技術として、認可されるでしょう。これは、多くの男性型脱毛症患者にとって、福音となります」(板見教授)

※週刊ポスト2012年11月2日号

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン