ツイッター、携帯でのメールなど、いちどに伝える文字量が少なくなっている時代。さらにSNSでは、基本的に不特定多数の人に発信することが多い。少ない文字量で不特定多数の相手に向けるツールで、伝えたいことを本当にきちんと伝えるのは難しく、「そんなつもりじゃなかったのに」という誤解やすれ違いも生じ、時として「炎上」に発展することもある。
第一生命経済研究所が今年7月に発表した「匿名コミュニケーションの対人距離感」という研究では、15歳から44歳の男女に対し、匿名でのコミュニケーションに対する意識調査を実施した結果が報告されている。それによると、SNS(ツイッター。ブログ、フェイスブック、ミクシィ)を利用している人は、実名や顔を知らないネット上の相手に対する距離感が近いことが明らかになっている。
SNS上の実名や顔を知らないネット上の相手には、対面では話しにくいことも気軽にいえると思う人は全体の67%にのぼるほか、SNS上では「こうなりたい自分」になることができると思うと考える人は51.7%と半数以上だ。
しかし一方で、ネットだけで交流している相手とは、いつでも関係を切れると思うと回答した人が61.4%となっており、研究レポートでは、関係終了のイニシアティブをとれる安心感から、匿名のほうが実名よりもより自由で積極的な自己開示がおこなわれるのではないかと分析。つまり、不特定多数に向けた発信は、あくまでも発信側の「こう見せたい」という意思が働いているものであり、匿名でのSNS利用は情報の受信者主体ではなく、発信者主体だと結論づける。
そもそも、SNSが登場するまでは、不特定多数の人にメッセージを発信するという行為は、「プロ」の仕事だった。例えば短いフレーズで製品や企業の特徴を不特定多数の受け手の心にヒットさせる職業としてコピーライターがあるが、今、コピーライターは一般人が日記やメッセージを公開する時代を、どうみているのか。あるコピーライターはこう語る。
「広告のキャッチコピーは、企業が言いたいことを言うだけの『売り文句』とは異なります。受け手の気持ちへの想像力から生まれ、文字通り、その視線や関心を『キャッチする』ための技が込められた言葉です。
メールやツイッターなど短い言葉でのコミュニケーションでは、誤解や対立が起こりやすいものですが、これは『想像力と伝える技の欠如』も原因のひとつだと思います」
17日には、東京コピーライターズクラブが、設立50周年を記念し、六本木ニコファーレにて「東京コピーライターズLIVE」を開催するという。名作キャッチコピーを生み出してきたコピーライターが集結し、「言葉の魅力」を再発見するイベントで、アイドルや芸人に「売れるキャッチコピー」をつけるほか、コピーライターによるプレゼン対決がライブで行われる。
その他投票による「コピー日本一決定戦」といったコーナーも。短い言葉だからこそ、そのひとことで伝わるように心をくだくのが「キャッチコピー」。伝えたいことを「受け手に伝えること・伝わること」を考え抜かれたコピーは、SNS時代の「発信力」を学ぶ一助となるかもしれない。