「仕事にも極上の比率がある。つまり、溢れ出す情熱とそれを包み込む理性だ!」。
俳優の佐藤浩市さんが、こう部下に熱血指導しながら菓子を頬張る。ロッテ『極上比率』の商品CMである。同商品は、生チョコやチーズを柔らかい焼き菓子の「ブッセ」でサンドした新感覚スイーツ。わざとブッセからチョコがはみ出す作りになっているのは、ひと口目から生チョコが味わえるような比率を突き詰めた結果だという。
いつの時代もヒット商品には“黄金比率”が存在する。もともとの意味は「人間の視覚的に最も美しく安定する縦横比率(1:1.618)」を指す。古くはエジプトのピラミッドや古代ギリシャのパルテノン神殿、現代では「iPod」やデジカメといった製品にも応用されている。
だが、視覚に訴える商品ばかりではない。食品、衣料、文房具……多くのヒット商品が、絶妙なバランスで人々の五感を刺激している。以下、代表的な商品を紹介しよう。
■柿の種(亀田製菓)
意外に知られていないが、柿の種とピーナッツの割合は6:4になっている。発売当初は7:3の割合だったが、柿の種が多すぎると炭水化物に偏るため、たんぱく質や脂質がバランス良く摂れるように配合バランスを変えたという。健康への配慮がロングセラーの秘密なのかも。
■パナップ(グリコ)
バニラアイスの中にジャムソースが入ったロングヒット商品。一時売り上げが低迷したが、ケーキ屋の「ミルフィーユ」をヒントに縦長に入っていたジャムを横に何層にも重ねた結果、スプーンを刺すたびに必ずジャムも味わえるように。その後、売り上げは前年比2倍になったという。
■黄金比率プリン(森永乳業)…現在は販売終了
2007年の発売からわずか5か月で10億円の売り上げを達成した伝説のプリン。プリンの主成分である卵黄と生クリームの理想的な比率を発見。全国の人気プリンを「硬さ」「なめらかさ」「口どけ」など科学的に分析して商品開発に活かした。
■フィットカット カーブ(プラス)
どこにでもある家庭用はさみかと思いきや、根元から刃先まで切断に最適な刃の開き角度(30度)を常に保つため、緩やかなカーブを持った刃を新開発。その結果、牛乳パックや段ボール、観葉植物まで切れ味バツグンのはさみが誕生した。
■スゴ衣(ワコール)
合成繊維素材の肌着が主流の中、同社は天然の綿を使った「天綿」を発売。東洋紡との共同開発で生地が厚くなってしまうなどの問題を解消した。秋冬用商品の綿混率は75%、春夏用は100%など、季節によって比率を変えている。
絶妙のバランスを持たせた商品が世に出るまでには、開発者たちの並々ならぬ試行錯誤と改良が繰り返される。さて、2013年はどんな“売れる黄金比率”が編み出されるのだろうか。