2012年10月、流通ジャーナリストの金子哲雄氏が、41歳という若さで逝去したが、病床にありながら、遺産整理や納骨堂の手配、葬儀の仕切りから会葬礼状まで、「人生の最期」を自身でプロデュースしたことは大きな話題となり、今、“エンディングノート”に注目が集まっている。
たとえば、突然の葬儀の場合にもエンディングノートで葬儀の意向をきちんと伝えていれば、葬儀費用が高額になることを防げるという。市川愛事務所リリーフ代表で葬儀相談員の市川愛さんが語る。
「葬儀社が勝手に葬儀の内容を決めてしまうというようなケースは以前より少なくなっているものの、混乱した中では葬儀社の説明をしっかり聞かないで契約をしてしまったり、葬儀社に丸投げしてしまうこともあります。そうすると、終わった後に金額もイメージも違うということになりかねないのです」
事前にエンディングノートに意向を書いておけば、喪主は冷静な判断で葬儀内容を検討することができ、故人にとっても希望通りの葬儀で送ってもらうことが可能になるのだ。
また、首都圏では最近、小規模の家族葬が数多く行なわれているが、地方ではまだ一般的ではない。
身内だけの家族葬を望んだとしても、本人のメッセージとして形に残っていなければ、遠方から駆けつけた親戚らの「なぜ盛大に見送ってやらないのか」のひとことで、必要以上の葬儀を行なわざるを得ないケースもある。
人数が多くなれば会場も大きくなり、祭壇の値段も飲食や返礼品の金額も大きく変わってくる。「本人の強い遺志で…」と伝えることができたら、親戚とも角が立つことなく、トラブル回避ができるというものだ。
さらに市川さんは、「何もしないで欲しい」と書く人がいるが、それはかえって家族のストレスを増やすことになる、と忠告する。
「今の時代、何もしないことのほうが難しいのです。例えば、火葬のみだと火葬炉の重い記憶しか残らず、見送りきれなかったという後悔を引きずってしまう。実際、そういう事例は起き始めています。もし葬儀を希望しないのならば、『何もしないで欲しい』と書くのではなく、『葬儀の代わりに、私の好きなすき焼きで食事会を開いて欲しい』などと書くといいのです」
※週刊ポスト2013年1月18日号