国内

安倍首相がネトウヨから特に支持される理由を山本一郎氏分析

 安倍首相はフェイスブックで活発に発言を行ない、多い時には4万以上の「いいね!」が押され、数千のコメントが書き込まれる。そこではいわゆる「ネトウヨ」が好む「マスコミ批判」も多数だ。領土問題に刺激され、ネトウヨの数は増えているとされている。ブロガーで投資家の山本一郎氏は、安倍氏がネトウヨから人気が高い理由をこう分析する。

 * * *
 安倍氏のフェイスブックに集まるネットユーザーには、多かれ少なかれ、嫌韓、反中やマスコミ批判を特徴とするネトウヨ的傾向があることはすでに知られている。石原慎太郎氏をはじめ、安倍氏以外にもタカ派と呼ばれる政治家は何人もいるなかで、特に安倍氏がネトウヨ的傾向のあるネットユーザーの間で人気が高い理由はどこにあるのだろうか。

  ひとつは、メッセージのわかりやすさである。安倍氏は「美しい日本」「強い日本」「日本を、取り戻す」といったシンプルな言葉を繰り返して訴える。かつて小泉純一郎元首相が「自民党をぶっ壊す」といった“ワンフレーズ・ポリティクス”で国民の支持を獲得したのを自民党幹事長や内閣官房長官として間近で見ていただけに、それに倣おうとしているのかもしれない。ネトウヨは白黒をはっきりつけたがる傾向があるので、安倍氏のメッセージのわかりやすさがしっくりくるのである。

 もうひとつの理由は、安倍氏自身にネットユーザーから支持を得たいという強い意識があり、良く言えば彼らに共感する、悪く言えば迎合する姿勢を見せることにある。そのことが最もわかりやすく読み取れるのが、マスコミ批判である。総選挙の公示日前日、〈「ネットなんかに~」と言うマスコミの人々に、草の根の力を認識させようじゃありませんか〉と呼び掛けたことが象徴するように、フェイスブックで繰り返しマスコミを批判し、対抗意識を剝き出しにしてきた。

 ネトウヨもマスコミを「既存の権威」や「反日」の象徴と捉えているので、安倍氏のマスコミ批判は賛同されやすい。安倍氏もそのことを理解した上で、頻繁にマスコミ批判を展開しているように思える。

 一方、ここ1、2年の間に、ことあるごとにネット上でネトウヨ的な言動をする集団のボリュームは、東日本大震災や竹島、尖閣などの領土問題により2倍近くに増加した。調査会社などの推計によれば、以前は6万数千人程度だったのが、今はおよそ11万人に達したとされている。

 これがコア集団だとすると、1か月に15分以上、関心を持ってネトウヨ的な言動を読む人言わば「ネトウヨ予備軍」は95万~110万人いる。20代後半にピークがあり、その前後5歳を加えると全体の半分強を占めるが、70代、80代にも一定の割合で存在する。

 また、ある通信社の調査によると、「安全保障」に関心を持つ有権者の割合は、以前は35~40%だったが、東日本大震災や領土問題が起こって以降、やはり2倍近くにまで増えた。「日本はこのままで大丈夫か」という不安が強まり、これを背景にネトウヨ的な気分が蔓延したのである。こうしたネットの地殻変動と安倍氏の言動がシンクロして起こっているのが、フェイスブックの盛り上がりだ。 

※SAPIO2013年2月号

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン