国内

ケータイ時代の写真館 「明るい遺影」「ロケ撮影」で需要創出

 今年は全国的に雪や雨に見舞われた成人式。あいにくの天候ではあったが、百貨店の振袖販売が好調に推移するなど、お金をかける傾向が目立った。「写真館」での撮影も好調だ。東京の京王百貨店新宿店の写真室では、記念写真の事前撮影は前年同比の1割増し程度。一人での撮影に加え、家族での撮影希望者が多く、撮影枚数が増える傾向にあったという。

 だが、写真館を取り巻く環境は厳しい。デジタルカメラやカメラ付き携帯の普及で、手軽に写真を撮る習慣が定着。それなりに美しい写真が、誰でも撮れるようになった。また、デジタル化にともなうDPE(写真の現像、焼き付け、引き伸ばし)市場の落ち込みの影響もある。2000年に約6000億だった市場規模は、2011年には約1200億円と、5分の1程度まで縮小。DPE業務を収益の一環としてきた写真館は減少傾向にある。

 そんな苦境のなかでも、昨今、新たな取り組みが目立ち始めている。

 全国で400店舗以上を展開する、子供向け写真館大手の「スタジオアリス」。1992年に1号店をオープンすると、その後、DPE業務からは撤退を決断。0~7歳向け写真に特化することで成長を続け、2011年期は過去最高益を達成した。人気ブランドやキャラクターものなど、500点以上の衣装を取りそろえ、大手商業施設内に立地するなど、使い勝手の良さが受けている。

 そのスタジオアリスは昨年12月、東京・六本木に大人向け写真館「Gratz(グラッツ)」をオープン。進行する少子化、競合店の台頭に対し、子供時代にスタジオアリスで撮影経験のある世代を、大人になっても取り込もうという狙いだ。

 スタジオアリスに限らず、新たな需要創出に動く写真店は増えている。その一つが、足を運んでもらう機会を増やすこと。昨今、自治体や学校などで実施されるようになった「2分の1成人式」(20歳の半分にあたる小学4年生で祝う)での記念撮影を呼びかけたり、マタニティフォト、遺影の撮影など、写真館で写真を撮るシーンを広げようと取り組む。

 2011年に日本写真館協会が新宿など全国3ヶ所で開催した「明るい遺影写真展」は多くの客を集めた。協会事務局長の菅野淳氏によると、元気なうちに望みどおりの遺影写真を撮りたいという希望は高まっているという。

 福岡の写真館「フォトスタジオビタミン」は、高齢者向けのプランを打ち出し好評だ。60歳以上限定で、ベース金額から年齢分を割り引くというもの。70歳は70%引き、100歳なら100%引き。大胆な価格設定で、写真に撮られ慣れていない世代を写真館に呼び込んだ。

 一方、写真館から外へ出る動きも活発だ。

 最近は、カメラ目線よりも自然な表情を好む人が増えており、ロケーション撮影と呼ばれる、屋外での撮影需要も増加。スタジオアリスは昨年から、水族館などアミューズメント施設でのスタジオ開設にも乗り出している。

 こうした動きを受け、前出の菅野氏も業界の今後に期待を込める。

「家族経営の写真館でも、2代目、3代目が新しいサービスを始めるなど、時代に合わせて変化できているところは持ち直しています。これまで写真館というと、特別な日に行く、やや敷居の高い存在でしたが、今後はもっとカジュアルなスタジオになっていく必要がある。もちろん品質は大事です。カメラが身近になったからこそ、プロの力が問われますし、一般の方が撮影する機会が増えたことで、プロの技術を分かっていただけるようにもなっています。

 あとはやはり少子化ですから、幼少期だけではなく、生涯にわたって利用していただきたい。震災後、年に一回、家族で写真撮影をされる方が増えているんですね。写真館は、ホームドクターならぬ、“ホームフォトグラファー”を目指して頑張っていきたいですね」

 東日本大震災の後、水や泥で汚れた写真を救う活動を支援する富士フィルムの「写真復旧ボランティア」は、大きな反響を呼んだ。写真は撮って終わりではなく、思い出とともに残し、折に触れて振り返ってこそ、永遠の価値を持つ。記念写真を残したいというニーズは、デジタル化時代でも普遍のようだ。

関連キーワード

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト