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腰痛85%が非特異的 心療内科・精神科でストレス軽減療法も

 腰痛は多くの中高年を悩ます症状だが、 自営業の男性・Aさん(55歳)の腰痛歴は長い。いくつかの病院を渡り歩くも原因がわからず鍼灸や整体も試みたが、一時的に楽になってもまた元に戻ってしまい変化は感じられなかった。このまま腰痛と一生付き合うのかと思うと、気分も落ち込む毎日だ。

 Aさんのように、原因がはっきりしない腰痛を非特異的腰痛といい、実に腰痛の85%がこのタイプだと近年わかってきた。いわゆる「ぎっくり腰」も非特異的腰痛に含まれるという。

 昨年末に発表された、日本整形外科学会・日本腰痛学会の腰痛診療ガイドラインには、非特異的腰痛に対しては従来の消炎鎮痛薬や抗うつ薬、筋弛緩薬などの他に、「認知行動療法」が有用であると明記された。

 認知行動療法とは、精神科や心療内科で行なわれる精神療法の一つで、物事の受け取り方や考え方を通して心や体の痛みを楽にし、問題を解決していく方法だ。

 たとえば、腰痛に対する認知行動療法の一つとして、患者に日記を書いてもらう方法がある。患者は痛みで「何もしたくない」と消極的な気分になりがちだが、自分がその日に達成したことを日記に書くことで、「痛くても自分はここまでできた」と認識し、痛みに対する考え方を改めていく。

 吉田祐文・那須赤十字病院整形外科部長が解説する。

「腰痛の原因が特定できないと診断された症例のなかには、がんが原因だったり、骨盤の異常である仙腸関節障害だったりすることもあります。特に、シニアにはがんや感染が原因の腰痛は少なくありません。

 まずは正確な診断が重要です。その上で、痛みの原因が精神的なストレスなのか生活習慣なのか、医師が患者さんときちんと向き合って探っていくことが大切なのです」

 実際に臨床現場では、薬だけではよくならない人が、医師に話を聞いてもらうだけで症状が和らいだり、腰痛が起きた時の対処法や生活習慣をアドバイスしただけで良くなるケースも少なくないという。

 こういった新しい腰痛治療は整形外科医が行なう場合もあるが、医療機関によっては心療内科・精神科と協力するチーム医療で効果を上げているところもある。

 たとえば、福島県立医科大学付属病院では、整形外科と精神科が協力して、抗うつ薬や抗不安薬の処方や認知行動療法、カウンセリング、運動療法などを行なうリエゾン療法(連携療法)を実施している。

 認知行動療法の医療費は医療機関により違いがあるが、自費で1回3000円程度だ。

「ストレスには精神的なもの以外にも冷えや疲労などもあります。冬の底冷えが腰痛を引き起こす人もいる。その場合には、冷えに効く漢方などを処方すると驚くほど効果が出る場合もあります」(吉田氏)

※週刊ポスト2013年2月1日号

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