国内

地頭よいが社会との接点少ない京大生は本当に就活に弱いのか

 就活で二強ともいえる東京大学と京都大学。しかし京大生は東大生と違って個性的で就活で苦労するという声もある。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が採用から見た京大生を解説する。

 * * *
「京大生は使えないって、本当ですか?」

 ある人から、こんな質問を頂きました。京大といえば、日本トップクラス、関西トップの大学であり、もともとは日本で2番めに出来た帝国大学です。その学生が使えないって、どういうことなんでしょう?

 よくよく聞くと、ネタ元はベストセラーになっている『採用基準』(伊賀泰代 ダイヤモンド社)でした。「マッキンゼーの採用マネジャーを12年務めた著者が初めて語る」という触れ込みだけに期待は高まりまくる本です。

 ちなみに、著者の伊賀泰代さんと著名ブロガーちきりんさんって、同一人物だという説が。いや、公然の秘密のようですね。マッキンゼーの方と会食した際は「ちきりんさんの面接でのジャッジはすごかった」という武勇伝を聞いたことがあります。ちきりんさんとお会いする機会があったら、「お前、伊賀だろ」と言うのは私のささやかな夢です。

 さて、本題です。京大生は使えないのでしょうか? 

 まず、誤解なきように・・・。同書は「京大生は使えない」と書いているわけではありません。たしかに「京都大学からの採用が難しいと感じます」という記述はありますけどね。

 どういう理由からかというと、もともとマッキンゼーの採用基準は、

1.リーダーシップがあること
2.地頭がいいこと
3.英語ができること

 であり、さらに現地法人であれば現地の言葉が出来ることがポイントとなるので、

4.日本語ができること

 が加わります。

 同書では、日本における採用においては1と3において、京都大学に限らず日本人は弱いと指摘しています。ただ、日本トップクラスであり、関西トップの大学である京都大学においては、関東のトップクラスよりもさらに厳しいと感じるのだそうです。

 その論拠として挙げられているのが、東京と違い「リアルな社会との接点」が少ないことです。東京は講演会や勉強会、インターンシップなどで起業家や社会人との接点も多く、ネット発のイベント、グローバルに開催されるイベントも豊富です。その過程で、「自分たちはまだまったく世の中では通用しない」という当たり前の事実を理解するとともに、「東京大学を出ています」などということにほとんど価値がないことを知るのではないか、と述べられています。

 英語力に関しても、京都大学では「英語ができないとマズイ」と真剣に考えている学生が驚くほど少ないのではないか、と。まあ、この本でも触れられていますが、これは東京とそれ以外の違いですね。外資系の拠点などは東京に集中しており、そこでインターンシップに参加できる機会などがあるわけですから。

 もちろん、ここでは「マッキンゼーの採用基準」やや広げて解釈すると、次世代リーダーを担う学生の採用基準から考えると、という意味ではあります。関西の名門大学は、よくも悪くも東京ほど就活熱が高くなく、就活に毒されずに大学生活を送りやすいというのはメリットもありますが。こういう環境だからこそ高まる力というのもあると信じたいですが、「採用基準」から考えると京大生は厳しいということでしょう。

 このように、同書では上記の理由から京大生は「採用が難しいと感じます」と言っています。

 ちきりんさん、じゃなかった、伊賀泰代さんがおっしゃることは当たっていると感じますが、ちょっと別の視点で私の個人的意見を述べましょう。

 京大生はですね、変わった人が多いという印象です。ちきりんさんが言っているように社会との接点が一般的には少なく、かつ地頭がよいと言われていることも一因でしょう。そもそも、企業社会に合っていないのではないかと思うほどの天才個性派が多いですね。あくまで印象論ですけど。私が最初に入社したリクルートは京大卒が多い会社でしたが、激しく頭がよく、一方で考え方が変わっている人が多かったですね。退職後の進路も政治家、ちょっと変わった業種での起業など、他大とは違っていました。私は京大生をラピュタ型人材と呼びたいです。激しく超越していて、天空に浮いているようだ、と。

 なお、そもそも論ですが、実はビジネスの場で、しかも文系職種の京大出身者と出会う場というのは、多くないはずなのですよね。京都大学は実はこじんまりとした大学です。同大学のホームページによると、平成24年3月の学部卒業者は2,893名なのですが、学部卒でそのまま就職したのは886人。そのうち104名は公務員ですから、民間企業で学部卒の京大生と出会う機会はどうやら少なそうだということがわかります。

 修士課程の卒業生は2,138人でしたが、そのうち就職した人は1,498人。これを合わせるとそれなりの人数になりそうですが、うち明らかに文系なのは93人です。理系はエンジニアや研究職になる人の割合が高いと考えると、特に文系よりの職場では京大卒と仕事をする機会はなかなかないということがわかります。

 ちなみに、この『採用基準』、面白い本ですよ。売れる理由がよくわかりました。「こうやったら内定が出る」というような就活本や、マッキンゼーの暴露本では決してなく、人材マネジメントだけの本でもなく、日本が今、直面している課題について、人材を切り口にして語る本なのだと、私は解釈しています。タイトルに『採用基準』とうたっているものの、マッキンゼー流の仕事の仕方とは何か、リーダーとはどんな人か、リーダーシップとは何かなど、世界基準の仕事のやり方、人材の採用の仕方、育て方を伝えている本だと私は解釈しました。

 マッキンゼーとその採用に関する誤解について、丁寧に説明しているのも良い点です。この手の本は、「欧米ではこうだ」「だから日本はダメなんだ」という話になりがちですが、この本は比較的丁寧に論じているなと感じ、好感が持てました。

 安心したのは、実はマッキンゼーという企業が「人間臭い」ことでした。別にロボットのような人間を求めているわけではありません。成長する可能性にかけていると感じた次第であります。

 話はやや戻りますが、皆さんのまわりの京大卒は、どんな人ですか? 職場に馴染めていますかね? ラピュタ型人材という表現、ご納得頂けましたかね?

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン