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三橋貴明氏 不動産価格上昇に問題はなくバブル原罪論は誤り

 日本人は「土地神話」という言葉を忘れかけていたかもしれない。1980年代後半には年に60%超の値上がりを記録した東京の地価は、1991年をピークに下落し、それから20年以上、私たちは「地価上昇」を体験することのない経済環境を過ごしてきた。

 そんな状況が変わりつつある。アベノミクスへの期待感から市場に流れ始めた投資マネーは土地、マンション価格を押し上げている。この現象は、地価の上昇と比例しながら日本経済を成長させ、国民全体が「富む喜び」を味わった、あのバブル時代の再来なのか──。

 1980年代のバブル経済の実感を持つのは、すでに40代以上の世代となった。それより若い世代にとって、バブルはもはや「日本史」の出来事だ。バブル経験世代の間にも、その崩壊の反動から「忌まわしき歴史」というトラウマが少なからずある。

 しかし、経済評論家の三橋貴明氏は「バブル原罪論は間違い」と指摘する。

「バブル崩壊後のデフレ期間、いわゆる“失われた20年”を招いたのは、バブルを強引に崩壊させた総量規制というハードランディング策の失敗だけでなく、資産デフレを止めなければならなかった1990年代終わりに財政再建を掲げて消費税増税や緊縮財政策を行なったことが大きい。そもそも不動産価格の上昇は悪いことではない。デフレに対して無策だったことをバブルの狂乱に責任転嫁するのは誤りです」

 事実、当時の橋本龍太郎・首相は、後に「1997年から1998年の緊縮財政は失敗だった。国民に深くお詫びしたい」と認めている。バブルを潰したのも、その後のデフレを克服できなかったのも、政治の責任というべきだろう。

 地価の上昇傾向とともに、20数年ぶりに立ち上りつつあるバブルの萌芽。これを育てるも摘むも安倍政権の舵取り次第ということになる。

※週刊ポスト2013年3月22日号

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