みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある。週刊ポストに連載する『死に方上手』で同氏は、死への悩みを減らす方法を提案している。
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“自分が死ぬ”ということを理解しているのは、動物でも人間だけといわれている。そう思って動物を見てみると、“死”を意識してないからか、悩みがなくて楽しそうに見える。
それならばいっそ、人間も死を意識してない動物のように生きてみたらどうだろう。
「タリラリラ~ン」
だの、
「ハァ~ポックンポックン」
だのいって、バカみたいに悩みなさそうに毎日を過ごす。
もう気分は小学生で、
「ボクは今、小学49年生!」
とか思っていれば、そうとう気持ちも楽になりそうだ。そういえば、還暦になると、赤いちゃんちゃんこを着せられる。あれには“赤は魔よけ”という意味合いと、60年生きたことで十干(甲乙丙丁~ってヤツ)と十二支が一周し、生まれた年の干支に戻ることから“赤ちゃんに戻る”という意味がある。
つまり60歳になったら赤ちゃんに戻ると考えられていたと理解できる。ならば小学生どころか、身も心も赤ちゃんになったっていいんじゃないか?
「バブー、バブー」
などといって老後を過ごせば、死への悩みはほとんどなくなりそうだ。人生なんていうものは、“無”から始まり“無”に還るだけのことだ。
本来ならば、そこになにも怖いものはない。死を目前にしても、変に物知りの大人のままでいるから“無”に還る準備が出来ず、それが死を怖いものにしてしまってないか?バカになる。それこそが、本当に無に還る精神的な準備なのではないか?
※週刊ポスト2013年4月12日号