ビジネス

三菱商事のカナダシェールガス開発 LNG換算で年間約2800万t

 今後は「非資源分野」へ注力すると三菱商事は表明しているが、現状ではエネルギー・金属といった資源分野が事業の柱であることは変わりない。ある社員は「資源と非資源は車の両輪にならなければならない」と語る。同社幹部は、「資源のない日本へエネルギーを安定供給することが社会的使命」とも言いきる。

 エネルギー分野で将来を期待されているのが、カナダで始まったシェールガス開発プロジェクトだ。

 シェールガスとは、シェール(頁岩)層から採取する天然ガスのことで、従来のガス田と違い採掘が難しい。近年、技術革新によって採掘コスト削減が可能になった。

 同社が同事業を検討し始めたのは2008年。その頃、「シェールガス」という言葉は一般的には知られておらず、石油メジャーのような支配力を持った事業者もいなかった。

「今ならばライバルと互角に戦える。掘削・精製といった“川上”の事業にも乗り出せるという判断があった」(シェールガス担当者)

 シェールガス開発プロジェクトは、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州のコルドバとモントニーの2か所で展開されている。コルドバは2011年10月に生産が開始され、ピーク時で日量約8億立方フィート(1立方フィート=約28.3リットル)を計画。モントニーは、今後10年で日量約30億立方フィートの生産を目指すという。この量は両区合わせてLNG換算で年間約2800万トン。財務省の貿易統計によれば2011年度のLNG輸入量は8318万トンだから、この2か所の生産量だけで輸入量の3分の1に匹敵する。

 プロジェクトは決して順調に進んできたわけではない。同社は2008年にはアメリカでのLNG輸入事業からの撤退という苦杯をなめた。その悔しさもシェールガス開発でのバネになった。

 当時の担当者は、人を寄せ付けない真冬のコルドバで、国際協力銀行の融資に必要な環境調査に立ち会った。

 気温はマイナス30度。視界は白一色。防寒装備をしていても、氷点下の空気がひりつく。周囲は森林と灌木だけが広がる地域で、アセスメントを受けて合格しなければ事業が認められない無事、環境調査はクリアできたが、なぜ厳しい自然環境にも立ち向かわなければいけなかったのか。なぜ同じくシェールガスの埋蔵量が多いアメリカではなくカナダの地を選んだのか。

「カナダは人口が約3400万人と少なく、一方で豊富な資源を有する典型的なエネルギー輸出国です。シェールガスは国内消費分換算で100~200年分の埋蔵量があると見られ、将来的には日本を含む環太平洋地域への輸出が視野に入る」(前出の担当者)

※SAPIO2013年6月号

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン