国内

大前研一氏 「憲法改正の焦点は9条や96条ではなく第8章」

 株価の急上昇などでその手腕を評価される安倍首相だが、大企業の設備投資計画が予想を下回るなど、アベノミクスに懐疑的なデータも出始めている。今、安倍氏にはどんな国家ビジョンが必要なのか? 大前研一氏が解説する。

 * * *
 残念ながら安倍政権を見ていると、日本をどういう国にするかという確たる構想も、目の前の痛みを受け入れる勇気も覚悟も見受けられない。4月中旬には3大都市圏で外国人人材の受け入れを緩和するなどの「アベノミクス戦略特区」を創設する方針を打ち出したが、この程度の規制「緩和」ではまだまだ小粒であり、不十分だ。規制は「撤廃」するくらいでなければ新しい産業が生まれてくることはない。

 企業も、今の日本は海外に比べるとスピードとスケールに欠けている。サムスンの李健煕会長や鴻海グループの郭台銘会長ら、韓国、台湾、シンガポール、中国などの経営者は、1000億円規模の投資をディナー1回で決める。

 昔は日本にもパナソニック創業者の松下幸之助氏、ソニー創業者の盛田昭夫氏、ヤマハの「中興の祖」と呼ばれヤマハ発動機創業者でもある川上源一氏ら、1人で大胆な意思決定のできる経営者がいた。が、今や日本の大企業はサラリーマン社長ばかりになり、そういうスピードやスケールの意思決定ができる経営者は極めて少なくなってしまった。

 どうも日本は政治、経済、社会すべての領域で「引きこもり」症状が悪化しているように見える。アベノミクスも自国民の税金を使って財政出動したり、日銀と銀行の間で国債とキャッシュをやり取りしてコップの中の水をグルグルかき回したりしているだけでは、実体経済が上向いて景気が良くなることはない。

 政府が数多く設置した会議の提案では、豪華な幕の内弁当のように“改革”の項目が羅列されているが、改革は1つに集中するくらいでなくてはうまくいかない。2つあれば、「時間軸」をずらして進めるべきである。

“引きこもり国家”に繁栄は訪れない。世界からヒト、カネ、企業、情報を呼び込まない限り、景気回復も経済再生も実現しないのである。そのポイントは、地方が世界から繁栄を呼び込む競争を開始する仕掛けとしての道州制だ。憲法改正の焦点は9条でも96条でもない。第8章(地方自治)を書き直し、中央政府から地方政府に主導権を渡すことだ。安倍首相は、それを肝に銘じてほしい。

※SAPIO2013年6月号

関連キーワード

トピックス

元皇族の眞子さんが極秘出産していたことが報じられた
《極秘出産の眞子さんと“義母”》小室圭さんの母親・佳代さんには“直接おめでたの連絡” 干渉しない嫁姑関係に関係者は「一番楽なタイプの姑と言えるかも」
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
川崎春花
女子ゴルフ“トリプルボギー不倫”で協会が男性キャディにだけ「厳罰」 別の男女トラブル発覚時に“前例”となることが避けられる内容の処分に
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン