ライフ

うつ対策 チーズや赤身の魚肉に含まれる必須アミノ酸と感動で

 近ごろ、日本は“うつ”の人が増えているといわれる。うつ病患者ではないけれど、うつの傾向があると感じる人へ向けて、諏訪中央病院名誉院長で『がんばらない』著者の鎌田實氏が、新刊『がまんしなくていい』(集英社)から、自分でできる幸せホルモンの出し方を解説する。

 * * *
 現在、日本には約100万人のうつ病患者がいるといわれている。うつうつとした傾向にある人は、10人に1人の割合だ。あなたの職場にも、この割合でうつ傾向の人がいる可能性がある。

 社会にうつ傾向が広がると、経済が停滞しがちだ。国民みんなが少しだけそう状態になったほうが、資本主義経済は、良い回転をするのである。

 もちろん、うつ病でない人は、薬を飲む必要はない。自分でちょっとだけ努力すれば、脳内にセロトニン(「喜びホルモン」や「癒しのホルモン」などと呼ばれる感動したり、美味しいものを食べたりしたときに、分泌される神経伝達物質)を出せるようになるからだ。

 セロトニンという物質を構成しているのは、必須アミノ酸のなかのトリプトファン。これはチーズや赤身の魚肉に含まれている。こういうものを食べ、小さな感動をすると、脳内にセロトニンが分泌されやすくなるといわれている。

 お父さんが子どもと一緒に夕日を見て、「きれいな夕日だなあ~」と繰り返し感動を伝えると、子どももセロトニンを分泌しやすい傾向になる。

 ウォーミングアップが大切なのだ。

 こういう習慣を継続的に続けていけば、子どもは感性豊かな子に育つだろう。こんな人は、うつにはなりにくい。

 一方で、セロトニンが足りなくなると、過食症になったり、アルコール依存症になったり、セックス依存症になったりしやすいといわれている。セロトニンは満足感とか幸福感と密接に関係しているからである。

 もう一つの幸せホルモンは他人を幸せにするときに、分泌されるオキシトシン。

 オキシトシンは、これまで子宮を収縮させ、乳汁を分泌させたりする、女性だけに関係するホルモンと思われていた。しかし男性にも、中高年の女性にも、相手の身になって親切な行為をすると、このオキシトシンが出ることが分かった。「情け」は自分のためにもなるというわけだ。

 しかもストレスを緩和し、感染症を予防し、生きる力を与えてくれるといわれている。

 アメリカ・オレゴン州のコンコルディア大学の研究によると、オキシトシンは信頼性や開放性や外向性や利他性を高めるという報告もある。

 子宮を収縮させる効果があり、産科領域で使用するために、すでにオキシトシンは注射やスプレーの形状になっている。いま、この幸せホルモンは、いろいろな領域で注目されているのだ。

●鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。ベストセラー『がんばらない』、新刊『がまんしなくていい』(集英社)ほか著書多数。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。

※週刊ポスト2013年5月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
悠仁さまの「加冠の儀」に出席された雅子さま(時事通信フォト)
《輝きを放つシルク》雅子さま、私的な夕食会で披露した“全身ゴールド” ファッション専門家「秋を表現された素晴らしい一着」
NEWSポストセブン
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
クイズ企画が人気を集めている『新しいカギ』の特番が放送される(公式HPより)
《1コーナーから2時間特番に》『新しいカギ』「高校生クイズ何問目?」が高校生から高い支持 「純粋にクイズを楽しめる」「負けても納得感」で『高校生クイズ』との違いも 
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン