今では人気を争って“総選挙”まで開かれている、ゆるキャラ。熊本県の人気キャラ・くまモンの関連グッズの売上は累計で300億円近くにもなる。ところで、これだけブームのゆるキャラたち、いったい中には誰が入っているの?
さまざまな自治体関係者に話を聞くと、「夢がないですね~」「野暮じゃないですか」「そういう話はNGです」とけんもほろろ。確かに、そもそも中に人なんていないのかも…。
しかし、ブームの“裏側”に迫るべくさらに取材を続けると、ゆるきゃらの“中身”にはいくつかのパターンがあることがわかってきた。大きく5つにわけられるようだ。
●自治体・団体の職員が入っている
これがもっとも多いのではないか。関東地方の某市役所の広報担当者が匿名を条件にこう語る。
「うちの場合は、基本的には観光課の職員が担当しています。職員の誰が入るかはとくに決まっていなくて、毎回、違う者が入っています」
ほかには、「熱心なファンには動きでわかってしまうので必ず同じ職員が入っています」(関東地方のスポーツ関連団体の広報担当者)という声も。動きに特徴があったり、しゃべるゆるキャラの場合は、同じ職員が入っているケースが多いようだ。
●着ぐるみ自体を貸し出す
甲信越地方の某県の広報担当者が証言する。
「1体ではなく、数体ありまして、それをイベントなどに呼ばれるごとに貸し出しています。職員が入ることもありますが、県外のイベントなどに貸し出すときはそのイベントの主催者にお任せしています。大きな動きをしたり、しゃべったりするキャラクターではないのでとくに問題ありません」
●ハローワークで募集
「○○のキャラクターに入る人募集中! 時給○○円!」こんな感じで募集が出ることが実際にあるという。キャラクター研究家の犬山秋彦さんが語る。
「県や市などの行政のキャラクターに多いですね。ハローワークで調べてみたら、誰もが知っているキャラクターの中に入る仕事が見つかるかもしれません」
以前、熊本県内の広告代理店が、“くまモンキャラバン隊の業務(運転・司会・着ぐるみ要員)”、という求人をハローワークで募集。そのときの月給が16万円だったことから「くまモンの月給、安すぎる」とネット上で話題になったことも。
●イベント会社に委託
「プロジェクトとして大きいものや、広くPRしたい場合には、イベント会社に委託することもあります。中に入る人や演出も含めて、一括でお願いすることもあるようです。ほかに、劇団のようなところに委託するパターンもあるようですね」(犬山さん)
●着ぐるみファンが入っている
こちらはちょっと特殊なパターン。犬山さんが明かす。
「キャラクターを展開する自治体や団体が、着ぐるみ好きの人や、ファンの人にお願いすることもあります。逆に“入らせてほしい”と直訴する人もいるんです。私もいろんなイベントに顔を出すと、同じ人が毎回、違うキャラクターに入っていることも(笑い)。交通費も自腹でボランティアでやっている人もいるようです」
犬山さんによれば、中に入っている人は、自治体職員もボランティアもそれぞれのキャラクターを理解した上で、そのゆるキャラを演じているという。子供やファンの期待を裏切らないためにいちばん苦労しているのは、実は中に入っている人だったりして…。彼らがブームをカゲで支えているのは間違いなさそうだ。