対談を行った歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さん
本と書店の魅力を広く伝えるキャンペーン「BOOK MEETS NEXT2025」が10月25日から11月23日まで開催中。そのオープニングイベントとして、読者の世界を広げるような書籍が話題の著者二人──歌人の俵万智さんと動物言語学者の鈴木俊貴さんが紀伊國屋ホール(東京・新宿)に登壇し、「つなぐ言葉、羽ばたく言葉」というテーマで対談を行った。その様子をレポートする。
自身初となる言葉についての論考『生きる言葉』(新潮新書)が話題の俵さんと、動物言語学者として、シジュウカラが言語能力を持つことを発見した様子をユーモラスに綴った初の単著『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)が幅広い読者を集めている鈴木さん。イベント当日が初対面となった二人の対談は、意外な出会い方をめぐってはじまる。
言葉の「光」の側面
俵万智(以下俵):本日の対談のきっかけは、実はX(旧Twitter)なんです。私が鈴木さんの本(『僕には鳥の言葉がわかる』)を読んで、本当に面白かったので、その感想をポストしたところ、小学館の担当編集の方の眼にとまったんですね。
鈴木俊貴(以下鈴木):びっくりしましたよ。教科書で見たあの俵さんだ! って(笑)。親に言ったら、親も驚いていました。
俵:それがご縁で、増刷に合わせて帯の推薦文も書かせていただきました。「面白すぎた! やるじゃないか、シジュウカラ。学問って、学ぶ以上に問うことなのだ。熱い『言葉論』としてもオススメです」と。
鈴木:まるで短歌のような音の良さですよね。あと、学問を「学ぶ」と「問う」に分解されていて、僕としてもハッとしました。そうか、僕は問うてきたんだなと思ったんです。
俵:SNSについては、炎上だとか分断だとか、暗い話ばかりを聞きますが、投稿をきっかけとして帯を書かせていただき、今日、こうしてお会いできたのは「光」の面だと思います。今年春に最初のつぶやきをしてから半年後の今、実際にお会いできるんですから。
鈴木:もともと俵さんの本はいくつか持っていたんですが、今日のためにさらに何冊か購入して研究しました(笑)。その結果、こんなに言葉について考えている俵さんだからこそ、あんな素敵な歌を詠めるんだということが理解できましたね。
俵:研究されてしまいました(笑)。今日は、そんな鳥の言葉の専門家である鈴木さんと、人間の言葉にまあまあ詳しい私とで、言葉について語り合えればと思っています。
