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新宿ゴールデン街 客→店主転身店や外国人客率6~7割の店も

 新宿ゴールデン街の魅力は、なんといっても“人と人の繋がり”である。

「飲み屋は学校みたいな所で、店主は客に酒の飲み方を教える。それから隣同士でも習って、人との接し方を覚えていく。そして後輩を連れてきて、先輩が去っても後輩が後を継ぐ。最近のチェーン店のやり方はただの経済行為ですが、この街は経済だけでは動いていない。酒場文化というものがあるんです」

 と語るのは、新宿ゴールデン街で35年の老舗、『クラクラ』の店主・外波山文明氏である。ゴールデン街の始まりは、終戦後間もなく開店された闇市で、現在の場所に移ってからは“青線”と呼ばれる非合法売春地帯として隆盛を誇った。

 飲み屋街へと姿を変えた後、1960年代後半から1970年代にかけて、若松孝二、大島渚、野坂昭如、中上健次、三田誠広、唐十郎など多くの文化人が酒を飲み、幾多の映画や芝居、小説がこの街から生まれた。現在、約260もの店が軒を並べるが、中には、客から経営者になったという若者や女性も少なくない。『琥珀』の“ゆうママ”もそのひとりだ。

「OLをしていたんですが、通っていた店のマスターに『空いてる店舗があるからやってみない?』といわれて、3年前にこの店をオープンしました。同僚だと本音を話せない部分もあるけど、ゴールデン街で知り合った人には心を開いて話せる感じがあります。だから、お客さんとの会話は大切にしています」

 また、数年前からよく目にするようになったのが外国人観光客である。客の6~7割が外国人だという『Aces』の店主・山下剛史氏が語る。

「外国人客の6割が観光客ですね。ゴールデン街は外国のガイドブックにも載っているんですが、初めて足を踏み入れる場所ってやっぱり不安だと思うんです。だから、うちの扉には『もし問題があったら声を掛けてください。私は英語とあなたを愛してますよ』という貼り紙を貼っています。外国人の方でも楽しく飲んでほしいですからね」

 時代が移り変わっても、酒を飲む楽しさは変わらない。ゴールデン街に根付く酒場文化はそのことを強く感じさせてくれる。

※週刊ポスト2013年6月14日号

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