喉頭は首の外表から眺めると、ノド仏の部分にあたる。喉頭は気管の上方に位置し、声帯を振動させて声を作ると共に、飲み込んだものが気管に入らないよう防御するなどの働きを担っている。
喉頭の一部には胃酸などの酸を感じるセンサーがあり、胃液が逆流してこのセンサーに触れると、左右の声帯がぴったりと合わさり、気管の入り口を閉鎖し、胃液が気管内に入ることを阻止する気道防御反射が起こる。その後、高音のヒューヒューという息を吸うときに伴う音と共に1~2分程度で消失する。これが喉頭けいれんである。
日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科の三枝英人医師の話。
「胃液が胃から食道内に逆流して症状を起こすのが逆流性食道炎ですが、喉頭けいれんでは、胃液が食道を乗り越えてノドの高さにまで逆流します。逆流した胃液が誤って気管に入り、更に肺の中にまで流れ込むと急性肺障害を起こし、生命の危機にすることもあります。それを阻止するために、気道防御反射として喉頭けいれんが起こります」
主に40代以上の働き盛りのやせ型の男性に多く発症し、一度起こると何度も繰り返すこともある。日中座り仕事が多い場合には、横隔膜の動きが抑えられ呼吸が浅く、胃腸の動きも悪い傾向となる。そこにストレスがかかると、交感神経が昂るために胃腸の動きがさらに悪くなり、胃液の分泌も増加する。
「治療はプロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬と消化管運動改善薬を服用しますが、逆流性食道炎よりも多い容量が必要で、複数の薬剤の併用が必要な場合もあります。また、夜中から早朝に頻発する場合は空腹時の胃腸の運動性を改善させる薬剤を使用しなければならない場合もあります」(三枝医師)
さらに治療には生活習慣や食習慣の改善も欠かせない。1日に45分程度、ゆっくりと呼吸をしながら散歩することも重要である。内臓の働きは自律神経系によって左右されている。胃腸のリズムを大事にすることは喉頭けいれんの予防にも繋がる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年7月12日号