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2013.07.13 07:00  NEWSポストセブン

街でデモする人「本気なら立候補すればいいのに」と映画監督

“泣ける“と評判が広がっている映画「立候補」の藤岡利充監督

 選挙のたびに投票率の低下が嘆かれるなか、インターネット上に掲載されている過去の政見放送は人気コンテンツのひとつだ。多くは“泡沫”と呼ばれる候補者たちだが、ネット上で彼らはネタとして消費されるばかりで、有権者と向き合う場所になりづらい。6月29日の公開以来、週末には入りきれなかった観客のために劇場側が急きょ上映回を増やすほど注目を集めている映画「立候補」監督の藤岡利充氏に、ネットに現実が影響を受ける日が来るのかと尋ねた。

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――政治家の悪いところをみつけてけなす傾向というのは、映画で題材にされた大阪W選挙のときにも、そういう雰囲気を強く感じたのでしょうか?

藤岡:ないとは言いませんが、人にはいろんな面があるとわかったうえで、大阪の人たちはああいう盛り上がり方をしていたのだと思います。大阪で映画「立候補」の試写会をしたとき、市長に当選したとたん敗者へ冷たくなった橋下さんの様子を見ても『橋下さんはああいう人でしょ』と冷静に受け止めていました。大阪の人は、冷酷なところも含めて橋下徹で、今はマイナスよりもプラスの方が大きいと考えているのでは。

――この7月からネット選挙解禁と言われています。選挙は変わると思いますか?

藤岡:変わらないんじゃないかと僕は思う。たとえば供託金300万円がないから立候補できないという言い方をされますよね。根底はその問題と同じだと思うんです。300万円あろうがなかろうが、立候補する人はする。300万円を言いわけにしているのでしょう。映画で取材させてもらった泡沫候補と呼ばれる人たちは、300万円とは関係なく立候補したと思います。ネットは現実と同じじゃない。

――実際、ネット上で熱烈に支持されている人が必ずしも選挙で得票を伸ばす結果は残せていないように思います。

藤岡:ネットでばかり発言している人たちは、本気じゃないと思うんです。自分ならどうするか考えたら、本気なら電話したり投書すると思う。直接会うのが難しい人が相手でも、何か方法があると思うんです。誰が聞くのかも見るのかもわからないネットという場所で、大勢の人の書き込みにまぎれて落書きみたいに書く方法が、誰かに届くとは思えない。

――インターネットが普及したからといって、現実は変わっていかないのでしょうか?

藤岡:詳しいことはわかりませんが、ネガティブな言葉が残っちゃうなあとは感じています。だから、ネットは1日1時間でいいんですよ。絶対にiPhoneとか持たないようにしているんですよ。Twitterとか映画上映のあとに見て必要以上に一喜一憂してしまうから。でも、本当はそれで世の中は変わらない。すごく気になるから見ちゃうんだけど、あんまり見ないようにしようと心がけています(笑)。

――とはいえ、ネット上の言論が街に出てきてびっくりさせられることも増えました。映画「立候補」のラストシーン近くにも日の丸を掲げた人たちが罵声を浴びせる場面があります。彼らの姿はネット上で保守的、国粋主義的な発言を繰り返す人たちと重なり、国会でも問題視されたヘイトスピーチを伴うデモを嫌でも思い起こさせます。ネットで活発に動き日の丸を手に街へ出る彼らの行動は、世の中を変えるのでしょうか?

藤岡:政治や社会を観察したり分析してきたわけではないので、自分だったらどうするだろうかと考えることしかできません。だから自分なら、もし何か不満があって変えたいことがあったり訴えたいことがあるなら、デモをしてもいいと思いますけど、立候補すればいいんじゃないですかね。あれだけ勢力があるんだったら、一人ぐらい選挙に当選するんじゃないですか。

――そういえば、彼らは東京で何度もデモを繰り返していますが、先日の都議選にもデモの主催者などは立候補していませんでした。

藤岡:本気でやる気があるんだったら、立候補するなり、自民党に入るとか具体的な行動をとればいいと思う。そこまでやってもらわないと主張することそのものがポーズに見えちゃいますよ。マック赤坂さんも、ポーズではなく主義主張を人に届けようとしているから本気だと感じるんです。

――強い思いがあって本気ならば、誰かに任せるのではなく自分でやってみるべきですね。

藤岡:やってみると、そのつらさがわかると思うんです。もしも自分が立候補したらどうなるんだろうと具体的に考えてみるだけでも違うと思います。そして本気で行動するのは尊いとわかる。この映画「立候補」をきっかけに、政治家でなくとも人生において何かに立候補するきっかけになればいいと思います。そうやって世の中を、もしくはそうやって立候補する人たちに対して、優しい目を持てる社会になればいいなと願っているんです。

――監督自身が、映像の仕事から離れて実家へ戻っても映画を撮りたい欲求がおさまらず、再び映画監督へ立候補されてますね。

藤岡:一回思いついてこだわっちゃったら、やらずにはいられません。

――今後もドキュメンタリー撮影は続けるのでしょうか?

藤岡:何でも、やれることを思いついたらやっていきたい。アカデミー賞を狙わないといけないですから(笑)。最近、打倒ジブリといったら、そっちの方が難しいといわれました(笑)。宮崎駿さんがすごく好きなんです。人間には善と悪の両方があってダメなところもあり、それでも一生懸命生きるのが素晴らしいという考え方に共感します。いつか『風の谷のナウシカ』実写版やりたいんですよ。7巻でやりたい。かっこいいと思いますよ。

●藤岡利充(ふじおか としみち)1976年生まれ。山口県出身。映像制作会社勤務を経て「フジヤマにミサイル」(2005年公開)で映画監督デビュー。監督第2作にして初めてのドキュメンタリー映画「立候補」は6月29日よりポレポレ東中野にてロードショー他全国順次公開。

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