ビジネス

ソニー再建の鍵「クセある技術者を奮起させること」と関係者

 日の丸家電の象徴、ソニーが喘いでいる。2013年3月期の決算こそ最終損益430億円の黒字で、過去5年で初の黒字を達成したが、中身は褒められたものではない。米国本社ビル(ニューヨーク)やソニーシティ大崎の売却によって当座を凌いでいる状況だ。

 かつてのウォークマンのようなヒット商品を生むことが、歴代最年少でトップに就いた平井一夫社長(52)の悲願だ。

 平井社長といえば身長180cm、ダークスーツを着こみ英語を流暢に操る姿が印象的である。幼少期からアメリカで育ち国際基督教大学卒。入社もソニー本社ではなく、子会社のCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント=SME)で、基幹たるエレキ事業とは無縁の経歴──。

 危機のソニーにあって、大ナタを振るうには打ってつけの人物なのだが、思うように改革は進んでいない。“ソニー官僚たち”の重しが弊害になっています、とソニー関係者が語った。

「見栄えはいいし、海外でのプレゼンを重視するソニーにとっては格好の経営者です。でも、前々社長の出井(伸之、社長在任1995~2000年、会長在任2000~2005年)時代からソニー中枢にいる幹部たちが平井社長に手枷足枷をつけているのが現状です。

 つい先日海外要人が来社した際なども、『英語で交渉すると揚げ足をとられるから交渉するな』と釘を刺されて平井社長は窮屈そうにしていた」

 前出の関係者によると、ソニーOBが集まった際、必ず出る話題が「出井さん以降、自由闊達な雰囲気が消えた」というものだ。

 広報部門の担当役員としてソニーブランドを世界に広めた出井氏は社長に就任するや、テレビなどのハードと映画などのソフトの融合を力強く説いた。だが、十分な成果をあげぬまま2003年のソニーショック(*注)を経て退任することになった。前述のソニー関係者の話。

「『サラリーマン社長が社長になっても回る会社にする』と言って憚らなかった出井さんが実権を握ったことで、その言葉通りソニーがサラリーマン化してしまった。出井さんがスタイリッシュだったゆえに、汗をかかずスマートにこなすのがソニーの流儀みたいな流れができてしまったんです」

 泥臭いモノ作り精神で世界に羽ばたいていったはずなのに、今の会社にその気概が感じられない、と関係者は一様に嘆く。

「会社にはまだ一癖も二癖もある技術屋がいる。彼らにやる気を起こさせることが社長にできるかどうかがソニー再建の鍵です」(同)

【*注】連結最終損益の大幅な赤字などの決算発表を受けた株式市場が動揺。ソニー株を売り出す投資家が続出した。

※週刊ポスト2013年8月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン