国内

掲示板で仲間を募集 内容を聞くと「窃盗のドライバーです」

 プロバイダの規制や警察当局の取り締まり強化は、皮肉にも「闇サイト」の更なるアングラ化を進めている。ネットの暗部で蠢く犯罪者集団の動向を、ジャーナリスト・渋井哲也氏がリポートする。

 * * *
 金銭目的の犯罪仲間を募集する掲示板は多数存在する。「即金日払い、高額なお仕事あります!」と掲げるあるサイトにメールすると、「違法なお仕事です。それでも良ければ電話番号を教えて下さい」と返信があった。こちらがしつこく内容を聞くと、「(仕事は)窃盗のドライバーです。納得して頂けるなら返信を」と返された。どこまで本当かは分からないが、なかには募集に応じた者から登録料名目で金を騙し取る詐欺もある。

 いわゆる「闇サイト」が注目を集めたのは2007年8月に起きた「名古屋OL拉致殺害事件」だった。求人サイト「闇の職業安定所」(現在は閉鎖)で結びついた3人の男が殺人を犯すという前代未聞の事件だった。同サイトの管理人によると、開設当初は「短期アルバイトの求人サイト」を目指していたが、ネットの匿名性、閉鎖性が悪用されるようになったのだという。

 しかし、たとえ「闇サイト」の規制を強化したところで、需要と供給がある限りネットを使った犯罪の根絶は不可能だろう。いまでも多いのは違法薬物の売買で、別の掲示板には「冷たいお菓子あります」との書き込みがあった。

「冷たいお菓子」は覚せい剤の隠語で、「アイス」や「S」とも呼ばれる。問い合わせると、書き込みの主は覚せい剤の密売であることをあっさり認めた。大麻は「野菜」、LSDは「紙」「神」などと言い換えられ売買されることもある。

 2000年代には、ネットを介した請負殺人や嘱託殺人事件が相次いだ。

 2005年12月、長野県松本市の無職男性が自宅で殺害された事件では、その長男がネットで殺害を依頼したとして、実行役の男とともに逮捕された。殺害に加担した長男の息子も逮捕されている。長男はネットの掲示板に「万が一にも殺したら100万円」などと書き込み、それに応じた男と面会して殺害計画を協議。その場で数十万円の着手金を支払っていた。依頼する側も引き受ける側も、まるでアルバイト感覚で殺人に手を染めていた。

 また、2007年の「川崎『何でも屋サイト』殺人事件」は、ネットで「何でも屋」を開設していた男性に20代女性が自殺のほう助を依頼。男は報酬20万円を受け取り、女性を殺害した。

●渋井哲也(しぶい・てつや):1969年栃木県生まれ。東洋大学法学部卒業後、「長野日報」を経てフリーに。ネット犯罪、教育問題、少年犯罪などについて取材を続ける。主な著書に『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎新書)、『ウェブ恋愛論』(ちくま新書)、『若者たちはなぜ自殺するのか』(長崎出版刊)など。

※SAPIO2013年9月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン