芸能

林与一 歌姫・美空ひばりにお客さんが喜ぶ男の演技を学んだ

 俳優の林与一は、歌手の故・美空ひばりさんの相手役としていくつもの映画に出演した。ひばりさんとの共演の思い出を語る林の言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が綴る。

 * * *
 1964年のNHK大河ドラマ『赤穂浪士』の準主役で人気スターとなった林与一は、1960年代後半から1970年代にかけて映画『お島千太郎』などで美空ひばりの相手役を務めている。「昭和の歌姫」として数々の名曲を残してきた美空ひばりだが、当時は女優としての人気も高く、時代劇を中心に多くの映画・舞台に主演していた。

「ひばりさんには、しょっちゅう怒られました。『長谷川(一夫)先生についていて、なんでこんなことができないの?』って。僕は長谷川のマネをするだけなのが嫌だったから、そうじゃない芝居をしたかったんですが。

 ひばりさんは『与一、こんな格好できない?』『ここのところはこうするんだよ』と教えてくださるのですが、そういう時の男の格好が上手いんですよ。

 最初はバカにしていました。歌い手がなんで俺に教えるんだ、と。でも、やっていることを見ていたらたしかに間違いはないですし、何よりあの人の立ち回りにお客さんが手を叩く。

 それで気づいたんです。お芝居というのは、最初は人のコピーから入って、そこから自分自身へと抜けだすものなんだと。それで(萬屋)錦之介さんの映画を観たりして、ひばりさんの求める芝居を勉強しました。

 そういうのを積み重ねながら、ひばりさんに『やっとできるようになったね』と認められるまで三、四年かかりました」

※林与一氏は、10月6日に「芝本流踊りの会」(大阪・吹田市文化会館メイシアター)に出演・監修。11月4日~12月1日は北島三郎特別公演(福岡・博多座)に出演。

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※週刊ポスト2013年9月13日号


関連キーワード

関連記事

トピックス

ツアーを終え、ロンドンに戻った宇多田ヒカル(2024年9月)
【全文公開】宇多田ヒカル、新パートナーはエルメスの店舗デザインも手掛けたグラフィックアーティスト ロンドンでひとときの逢瀬を楽しむ適度な距離感 
女性セブン
かつてバンドメンバーだった桜塚やっくんとTaiga(右)
【目の前で目撃】37歳で急逝・桜塚やっくんの命日に元バンドメンバーが墓参り 事故当日の詳細を初告白「悔やんでも悔やみきれません」
NEWSポストセブン
4月クールに『アンチヒーロー』で主演をつとめた長谷川博己
ドラマ『アンチヒーロー』で衣装に関する“200万円請求書”騒動 長谷川博己のオリジナルコート制作費をめぐってスタイリストと制作サイドが衝突か
女性セブン
佐賀空港を出発される愛子さま(時事通信フォト)
雅子さま「午後だけで4回もの休憩」不安視された22年ぶり佐賀訪問で初めて明かした「愛子さまとの私的な会話」
NEWSポストセブン
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司組長だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
NEWSポストセブン
ドキュメンタリー映画『Screams Before Silence』でインタビューに応じるアミット(映画の公式インスタグラムより)
《55日間のハマス人質日記》囚われた女性が語る地獄の日々「生理の時期を毎日確認されて…」【音楽フェス襲撃から1年】
NEWSポストセブン
10月8日、美智子さまは「右大腿骨上部の骨折」の手術を受けられた(撮影/JMPA)
美智子さま「大腿骨の上部骨折」で手術 待ち受ける壮絶リハビリ、骨折前より歩行機能が低下する可能性も
女性セブン
結婚を発表したマイファス・Hiroと山本舞香(Instagramより)
《マイファスHiroと山本舞香ゴールイン》2人が語った結婚の決め手と夫婦像「作ったご飯を笑えるほどたくさん食べてくれる」 結婚記念日は新妻のバースデー
NEWSポストセブン
東北道・佐野サービスエリアの現在とは
《前代未聞のストライキから5年》激変した東北道・佐野SA「取り壊された店舗」名物「佐野らーめん」の現在、当時の元従業員が明かした39日間の舞台裏
NEWSポストセブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
「ほぼ丸出し」“過激ファッション”物議のビアンカ・センソリが「東京移住計画」ラッパーのカニエ・ウェストと銀座に出没、「街中ではやめてくれ」の指摘も
NEWSポストセブン
田村家のお正月の風景。左・田村正和さん、右・田村亮さん
《『古畑任三郎』では今までにない自分を》俳優・田村正和さんの知られざる晩年「もうやりきった…」77才で他界した2人の兄を語る弟・田村亮
NEWSポストセブン
9月末に給料が未払いとなり、職員が一斉退職するという事態になった足立区の住宅型有料老人ホーム。千葉県内などにもある関連施設でも同じような”未払い”が発生しているという
《見捨てられた老人ホーム》東京・足立区で「人手が回らず餓死者が…」「お風呂も入れられない」給与未払いに社長は雲隠れ…元職員が明かした“現場丸投げ運営”の実態
NEWSポストセブン