宮崎駿監督の引退が話題ですが、ジブリ映画では『借りぐらしのアリエッティ』を劇場で見たのが直近です。何よりときめいたのは「小さい人」が大きな世界で暮らす工夫の数々でした。 マンガにも「小さい人」のときめくお話は多々あります。Q.B.B.『ヨーチA』(秋田書店)は、スランプの渦中にあるマンガ家・クソミの前に、謎の手のひらサイズの生命体・ヨーチAが現れるお話。
ペケレレというウクレレみたいな小さな楽器を弾き、おろし金の上で足の裏に気をつけながらショウガをおろし、クソミの体によじ登ってクライミング! 口調も一人称が「わいちゃん」だったり、語尾に「です!ます!」とつけたりととにかくかわいいのですが、「キミって自意識過剰だよ」とかクソミにズバリと言い放つ生意気なヤツ…というか、実はかなりの曲者なのです。
本当は巨大モードで大きくなることもできるのですが、「それじゃかわいくないでしょ!」とわざと小さな体でいろんなこと(そうめんをゆでたり)をしているフシもある。「小さくてかわいい自分」を満喫&サービスしているヨーチAなのでした。 もう1冊は、内田春菊『南くんは恋人』(集英社)。27年前の大ヒット作『南くんの恋人』では1/10サイズに小さくなるのは高校生の女の子・ちよみでしたが、今回小さくなるのは男の子・南くんのほう。小さいおにぎりを両手を使って食べたり、お風呂でバシャバシャ泳いだり。
でも本人はかわいいなんて言われたくなくて、「一寸法師みたいに小さくても女を守れる男でいたいよな」。「え? 南くんを守ってるのは私でしょ?」と言うちよみにムスッ…。
あとがきで著者は、小さくなったちよみは小さい自分を楽しんでいた(=女性は一般的に順応性が高い)が「南くんは小さくても男でいようとする。何かを成し遂げることばかり考える。そして嫉妬に燃える!」と書いています。体を小さくしたことで、男と女の違いがくっきり。南くんとは逆に小さくてかわいいことを武器にしているヨーチA…ヤツは、むしろ「大物」なのかも!?
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2013年9月26日号