ビジネス

FRB出口戦略で1ドル=110円の円安進む可能性を専門家指摘

 米国が金融緩和の「出口戦略」に向けて動き出したが、日本だけがアクセル全開で「異次元」の金融緩和を続けている。「それこそが、日本株がまだまだ世界的に魅力的な投資先であることの証左」と語るのは、海外投資のカリスマとして知られるグローバルリンクアドバイザーズ代表・戸松信博氏だ。今後の日本株の見通しについて、戸松氏が解説する。

 * * *
 高らかに号砲を上げて始まったアベノミクス相場が、乱高下に見舞われている。しかし、日本株の上昇局面は、決してこんなものでは終わらない。

 それは「異次元」の金融緩和が指し示している。実際、日本のマネタリーベース(通貨供給量)は急増しており、2012年末の138兆円から2014年末までに270兆円へと倍増する見通しだ。

 これがどれほどの規模かというと、日本銀行が国債などを買い入れるペースは月額にして約7兆円で、現在、FRB(米連邦準備制度理事会)が実施している額にほぼ匹敵する。これを経済規模で比較すると、米国は日本の約3倍あるため、そのインパクトは日本の方が3倍大きいといえるだろう。

 ましてや米国のQE3(量的金融緩和第3弾)は、FRBが「出口戦略」に向けて動き出したところだ。そうしたなか、アクセル全開の日銀の金融緩和は、世界でも突出した存在になろうとしているのである。

 その結果、もたらされるのはさらなる円安だ。FRBが米国債の買い付けを減らせば国債価格は下落し、金利は上昇する。その一方で日銀は国債を買い支えるため、金利は上昇しにくい。日米の金利差が拡大すれば、より高い金利を求めてドル買い・円売りが進むことが予想される。

 ただでさえ日本は、エネルギー関連の輸入が膨らんで貿易赤字に転じるなどファンダメンタルズが悪化しており、円安に拍車がかかることは想像に難くない。FRBが本格的にブレーキをかけ始めれば、おそらく1ドル=110円近辺まで円安が進むのではないかと見ている。

 そうなれば「円安→株高」という流れが再び加速することは間違いない。少なくとも、日銀がアクセルを踏み続ける来年末までは日本株を強気に見ていいだろう。日経平均株価でいえば、2007年に記録した1万8000円超えはもちろん、2万円台を視野に入れた展開があってもおかしくない。

 無論、株価はそう単純に動くものではない。日本株に最も大きな影響を及ぼすのは、やはり米国経済の動向だ。

 なかでも浮沈を握るのが、米国の失業率である。7月末時点で7.4%まで低下したとはいえ、依然としてリーマン・ショック前と比べれば高い水準にある。FRBはゼロ金利解除の条件として、インフレ率が目標(2.0%)を達成し、失業率が6.5%に低下するまでという方針を示しているが、この水準ではゼロ金利解除はもちろん、量的緩和の縮小ももう少し長引くかもしれない。

 それはすなわち現在のような「金融相場」が続くことを意味し、そこからさらなる株高を望むためには、米国が「業績相場」に転換できるかどうかにかかっている。

 そこでカギを握るのが、米国の不動産市況の回復だ。米国の住宅価格動向を示す「ケース・シラー住宅価格指数」を見ると、昨年から順調な右肩上がりとなっている。不動産価格や株価が回復すると資産効果によって米国の個人消費の盛り上がりにつながる。それによって今年のクリスマス商戦が活気づくようだと、いよいよ業績相場に移行する可能性が高まってくるだろう。

 そして、米国が業績相場入りすることで世界的な好景気につながっていけば、日本株をさらに後押しするのは間違いない。

※マネーポスト2013年秋号

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン